原発報道の教育効果 - 岡田克敏

2009年09月15日 13:09

 原子力発電ほど、その重要性に見合った評価がされて来なかったものはないと思います。日本の電力供給の約3割占め、CO2排出がほとんどないため温暖化の防止にも有効であることが再評価されていますが、原発に対する国内世論は必ずしも好意的とは言えません。


 このたび与党となった社民党は今も「脱原発」を掲げています。同時に2020年にCO2排出を90年比で30%減を主張していますが、はたして両立できるのでしょうか。長い野党時代に染みついた「非現実性」が通用するかが試されることになりそうです。

 過去の原発に関する報道は事故や危険性に関するネガティブなものがほとんどであり、その多くが過大であったと思われます。柏崎刈羽原発の中越沖地震での報道は、変圧器から煙の出る映像が執拗に流され、ラドン温泉の約30立方cmに相当する微弱な放射能漏れが大きく報道されました。そのため風評被害が生じ、イタリアのサッカーチームが来日を中止するというおまけまでつきました。

 一方、原発の意義や有用性が報道されることはあまり記憶がありません。原発は電力の安定供給と価格の安定に大きく寄与していますが、われわれはそれに感謝することはほとんどないと言えるでしょう。

 そのような報道の結果、原発は重要な役割を担うものというより、危険で迷惑なものとみなされる傾向が強くなりました。原発の新規設置は困難になり、原子力学科を志望する学生数は大きく減少しました。僅かな放射能漏れで日本中が大騒ぎするようなところで働きたくないのは当然です。

 経産省の調査によると、1994年度に1739人と最多を数えた国立大学の原子力関係学科の学生数は、2006年度に137人と、10分の1以下にまで落ち込みました。学科再編で学科名から「原子力」が消えて統計から抜け落ちた影響もあるものの、人材供給の先細り傾向は既に「危機的な状況」とされています。

 すべての原因がマスコミにあるとまでは言えませんが、マスコミが作り出したイメージは若者に原子力の夢ではなく、悪夢の方を与えてしまったようです。志望者の減少は理系全体でも起きていて理系離れと呼ばれ、また学力の低下も明らかになりました。

 以前紹介したように、ある高校のクラスの半数が「科学技術は役に立っていない」と認識し、全員が「科学技術が環境を壊している」と考えている、という例がありました。このような、科学技術に対するネガティブな認識はマスコミとマスコミに影響された教育の産物と考えられます。また日教組と社民党は多くの点で共通の認識をもっており、その影響も否定できないでしょう。

 マスコミはほぼ文系出身者で占められます。履修している筈の高校レベルの理科をほぼ理解している人はどれだけいるでしょうか。紙面を見る限り、彼らが科学技術に対して十分な認識をもっているという印象は残念ながらありません。

 原発だけでなく科学技術全体にとっても優れた人材が不足する事態は長期的には大変深刻な問題です。マスコミや教育がその遠因になっていることは十分考えられることであり、それらが徐々に日本の基盤を蝕んでいくことを憂慮します。将来、科学技術の優位性なしに日本が食っていく方法があれば別ですが。

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