地球温暖化により問題視されている炭酸ガス(CO2)であるが、欧州において供給不足が発生し、サッカー・ワールドカップ開催中という需要期にビールや炭酸飲料の供給に影響がでる可能性がでてきた。
FTによると、食品に利用する炭酸ガスで、欧州最大の供給源の一つとなってきたのがアンモニアプラント。炭酸ガスの不足は、欧州北部各地にある少なくとも5つのガス生産会社が初夏の数カ月間、メンテナンスで工場を閉鎖しているためだとしている。
CNNも欧州では全土で炭酸ガス不足が深刻化して、食品製造業を脅かしていると伝えた。欧州で複数の大手アンモニア工場がメンテナンスのために操業を停止したことから、炭酸ガスの不足につながったとしている。
欧州でのビールや炭酸飲料のメーカーにとって今回の炭酸ガス不足は、夏の暑さとワールドカップ開催で需要が急増する最悪のタイミングと重なった(CNN)。英国ではビール供給が割り当て制になっているとか。
同じようなタイミングで、日本ではドライアイスの深刻な品不足が発生し、メーカーが大規模な出荷制限に動き出した。ドライアイスについては、原油を精製してガソリンなどを生産する過程で生じる炭酸ガスから製造している。29日の日経新聞によると、今年は製油所で小規模なものも含めて30件前後のトラブルが発生し、炭酸ガスの供給が減ったとされる。
欧州と日本で、同じようなタイミングで、炭酸ガスの供給に支障がでたということなのであろうか。しかも、日本でのドライアイス不足も夏本番を迎え、宅配や食品業界への影響が懸念されている。ドライアイスは6月末からお盆にかけて需要の6割が集中するとされている。
ドライアイスの供給が集中するのは一時期ということもあり、供給不足が値上げには結びついていないようだが、関係者からは今後は値上げのお願いもあり得るとの声もでているとか。
ここにきて原油先物価格が再び上昇してきており、28日にWTI先物8月限は73.45ドルと2014年11月以来の高値をつけてきた。今後はガソリン価格の上昇も予想され、こちらは物価に直接影響を与える可能性がある。
炭酸ガスの供給不足による物価や個人消費への直接的な影響はいまのところそれほど大きくはないかもしれないが、タイミングがやや悪いこともあり、このまま炭酸ガスの供給不足が続くとなれば、影響が拡がる恐れもあり、注意も必要か。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年7月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。