産経新聞によれば、民主党の松本剛明元外相が民主党に離党届を提出した。その理由は「今年の国会でさまざまに感じ、思うところがあったので結論を出した」ということらしい。恐らく、あの狂騒としか表現できない様な暴力的な国会戦術に嫌気がさしたのだろう。
父親の松本十郎氏は防衛庁長官を務めた人物だし、松本氏本人も外務大臣を努めている。政治、外交の重責を担う立場にあった人ならば、いくら党利党略のためとはいえ、あまりに極端な表現に嫌気がさすのも当然だ。集団的自衛権の行使容認は、日本の安全保障体制をより堅牢なものにする。それは、外交、安全保障を学べば、そう結論付けざるをえない類の話だ。勿論、個別的自衛権だけでいいのだという議論もあるが、集団的自衛権の行使が不可能な状態で、「周辺事態法」で米軍の「後方支援」が可能であったという状況の方が異常である。これは、どう考えてみても、集団的自衛権の行使だからだ。
安全保障政策を党利党略のための手段にしてはならない。それが、日本のリベラルにはわからない。ここに日本の不幸がある。
拙著『平和の敵 偽りの立憲主義』で詳述したが、戦後長きに亘って、社会党は、「非武装中立」を主張してきた。しかし、それは本音とはいえない、パフォーマンスだった。だから、村山富市内閣が誕生した際に、従来の主張を弊履の如く捨て去った。
日本を守る安全保障に右も左もない。日本国民の生命、財産を守るのは政治の使命だ。安倍内閣を攻撃する手段として、安保法制を利用したのは間違いだ。
だから、民主党は選挙で勝てない。宮城県議選挙では、自民党は敗けずに、民主党が敗れ、共産党が躍進した。理由は明白だ。野党の票が共産党に流れているのだ。
私は、こういう状況は日本にとって不幸なことだと考えている。皇室の存在を「天皇制」と位置づけ、いずれ克服する(=打倒する)対象だと捉えている共産党が、躍進している事態は、空恐ろしい。
リベラル勢力が、実現不可能であったり、虚妄に等しい過激なことだけを主張していたら、それはリベラルの自殺である。端的に言えば、共産党の躍進に繋がるだけである。
今さら引くに引けない状況に追い込まれているのだろうが、民主党は、党勢を立て直すためには、安全保障政策の充実を図るべきだ。
『岩田温の政治哲学講義』、本日配信しました。内容は太宰治論です。占領期の太宰治の意外な側面について詳述しました。『正論』で掲載して頂いた論考に大幅な加筆修正を加えました。是非、ご登録の上、お読みいただければ幸いです。
編集部より:この記事は岩田温氏のブログ「岩田温の備忘録」2015年10月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は岩田温の備忘録をご覧ください。