ついに共産党と「閣外協力」する立憲民主党:社会主義政権への第一歩

「閣外協力」に踏み切った立憲民主党

9月30日、立憲民主党と共産党の党首会談が行われ、政権交代が実現した場合は、共産党は立憲民主党と連立はしないが、「限定的な閣外協力」を行うとの方針で合意した。報道によれば、立憲民主党の枝野代表が上記の提案をし、共産党の志位委員長がこれに合意した。

志位氏と枝野氏 Wikipediaより

志位氏は、共産党から閣僚を出さず、市民連合と合意した「安保法廃止」などの共通政策や、その他の協力できる課題について最大限協力すると強調し、「とても満足している」と述べた(9月30日付け「TBSニュース」参照)。

「閣外協力」の背景

今回、立憲民主党が共産党との「閣外協力」に踏み切った背景は、いうまでもなく間近に迫った解散総選挙の情勢が、菅首相退陣、自民党総裁選、新総裁誕生、コロナ新規感染者急減等により激変したことである。マスコミ各社の世論調査を見ても、直近の自民党の支持率は軒並み上昇している。

こうした選挙情勢の激変が、「政権交代」を目指す立憲民主党に危機感や焦りをもたらしたのであり、共産党との「閣外協力」を容認してまでも選挙区調整(「小選挙区候補の一本化」)を進める必要に迫られた結果と言えよう。

「閣外協力」に反対の「連合」

しかし、立憲民主党の主要な支持団体である「連合」の神津会長は、基本理念や基本政策の異なる共産党との「閣外協力」にも反対していた(2021年6月23日付け「時事ドットコムニュース」参照)。したがって、今後は「連合」の対応が注目される。また、立憲民主党内での賛否の議論にも注目したい。

今回の合意につき共産党の志位委員長が画期的であると満足するのは、かつて、日本において、共産党と他の野党が「閣外協力」の合意をした例がないからである。旧日本社会党も共産党と「閣外協力」の合意はしていない。なぜなら、党規約2条で共産党が立脚する共産主義イデオロギーである「科学的社会主義」すなわち「マルクス・レーニン主義」(「階級闘争による暴力革命とプロレタリアート独裁の樹立」)の理念は、他の野党が立脚する議会制民主主義の理念とは相容れないからである。

今思えば先般の共産党による「敵の出方論」(「暴力革命論」)の不使用宣言も「閣外協力」合意のための地ならしであったと考えられる。しかし、共産党は現在も暴力主義的破壊活動を取り締まる「破壊活動防止法」(「破防法」)の調査対象団体であることに変わりはない。

共産党の統一戦線戦略である「閣外協力」

日本共産党の当面の革命戦略は、「さしあたって一致できる目標の範囲で統一戦線を形成し、統一戦線の政府(「民主連合政府」)をつくることである。」(「改定党綱領四の一四」参照)。

したがって、今回の立憲民主党との「閣外協力」の合意は共産党の革命戦略である統一戦線戦略の一部に他ならない。立憲民主党は単に目先の「票欲しさ」のあまり、現在も「破防法」の調査対象団体である共産党の上記革命戦略を見誤ってはならない。日本共産党はあくまでも社会主義・共産主義社会を目指す革命政党なのである(「改定党綱領五」参照)。

旧ソ連共産党は「労農同盟」、中国共産党は「国共合作」という「統一戦線戦略」により社会主義革命を成功させたことを忘れてはならない。「統一戦線戦略」は共産党の「常套手段」なのである。

「閣外協力」は社会主義政権への第一歩

周知のとおり、日本共産党は、かねてより立憲民主党などの野党に対し、選挙協力により自民党政権を打倒し、「野党連合政権」の樹立を提唱してきた。今回の「閣外協力」の合意により、立憲民主党は「野党連合政権」に一歩近づいたのである。

共産党の志位委員長も9月30日の記者会見で、「今回の閣外協力の合意は、わが党が提唱してきた野党連合政権の一つの形態である。」(10月1日付け「しんぶん赤旗」参照)と述べている。改定党綱領の四、五から言えることは、日本共産党は「野党連合政権」を経て、統一戦線の政府である「民主連合政府」を樹立し、「社会主義政権」の成立を目指していることは明らかである(2020年1月23日付け「アゴラ」掲載拙稿「「二段階革命」を狙う日本共産党「野党連合政権」の危険性」参照)。

したがって、来るべき総選挙においては、日本国民は、今回の立憲民主党と共産党との「閣外協力」の合意が、「社会主義政権」への第一歩となり得ることも十分に認識したうえで、政権選択選挙に臨むべきである。