長崎県大村市同性カップルの住民票の続柄に総務省が見解

虚偽公文書作成罪では?

総務省「実務上の問題・法の目的に沿ったものではない」全国に通知

総務省|松本総務大臣閣議後記者会見の概要(令和6年7月12日)

質疑応答
同性カップル世帯の住民票(1)
問:
長崎県大村市が男性カップル世帯に対して同居するパートナーの続柄の欄に「夫(未届)」と記載した住民票を交付した件でお伺いします。総務省は先日、実務上の課題があるという見解を示されました。これに対して、神奈川県横須賀市など、大村市と同様の運用を始めている自治体では、方針を変更しないという考えを示されているところもあります。先日の会見では、ほかの自治体にも情報共有を図っていくとおっしゃっていましたが、どのように対応されていくお考えでしょうか。また、大村市は先日の総務省の見解について再質問を行ったようですが、今後どのように対応していかれるのか、併せてお考えをお伺いしたいと思います。
答:
まず、全国への対応ですが、7月8日に大村市にお伝えした総務省からの助言につきましては、全国の都道府県にお送りしておりまして、各都道府県から自治体との共有をお願いさせていただいているところでございます。
また、大村市から改めて質問が来ているということで、私もそのように報告を受けておりますので、できる限り丁寧に対応できるように、担当部局で検討を進めているという状況だと承知しております。

長崎県大村市が同性カップルの住民票の続柄欄に「夫(未届)」と記載して発行した問題で、総務省が「実務上の問題がある・法の目的に沿ったものではない」と回答していたこと、そして同趣旨の内容を全国の自治体に助言していたことが明らかになっています。

大村市に対する回答文については朝日新聞に一部が掲載されています。

「社会保障制度の適用を判断する公証資料」であることが強調されています。

同性カップルへの住民票交付「実務上の問題あり」 総務省が見解示す 朝日新聞

同性カップルへの住民票交付「実務上の問題あり」 総務省が見解示す:朝日新聞デジタル
 長崎県大村市が5月、市内の同性カップルに対し、続き柄の欄に「夫(未届)」と記した住民票を交付したことに関し、同市は8日、住民票事務を所管する総務省から「住民基本台帳法の運用として実務上の問題がある」…

住民票の続柄欄の記載というのは、住民票の写しが印刷されて届出をする行為が無くとも、その情報があるだけで年金や税制度等の公的制度において参照され、それによって利益を得る事があり得ると推測できます。

長崎県大村市等が同性カップルの住民票の続柄に「夫(未届)」の問題

長崎県大村市が同性カップルの住民票の続柄に「夫(未届)」と記載して発行した件については市議会でも問題視されています。

また、他の自治体では厚生労働省から関係する法制度が100以上あると回答を受けており*1、行橋市や仙台市*2などが「そのような記載は行わない」と答弁するなど、自治体によって運用が割れている現状があります。

他方で、他の自治体でも同様の運用を行うと明言・検討している所がある中で、総務省の見解が発せられてからも反発する自治体の存在が報道されています。

当の大村市や栃木県鹿沼市と栃木市が「自治体の裁量の範囲内で支障が無い」などと言い張っています。

技術的助言の先にある是正の要求と自治体の不作為に関する国の訴えの提起

今回の総務省の見解の通知は「技術的助言」であるという話ですが、国側の権限といしては他にも「是正の要求」というものがあります。この場合には自治事務であろうが、是正改善のための法的義務が自治体側にあることになります。

この表で理解が止まっている人も居るかと思われますが、実際には地方自治法には、自治事務に対する是正の要求等に従わなかった場合の『その先』が規定されています。

地方自治法

(普通地方公共団体の不作為に関する国の訴えの提起)
第二百五十一条の七 第二百四十五条の五第一項若しくは第四項の規定による是正の要求又は第二百四十五条の七第一項若しくは第四項の規定による指示を行つた各大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、高等裁判所に対し、当該是正の要求又は指示を受けた普通地方公共団体の不作為(是正の要求又は指示を受けた普通地方公共団体の行政庁が、相当の期間内に是正の要求に応じた措置又は指示に係る措置を講じなければならないにもかかわらず、これを講じないことをいう。以下この項、次条及び第二百五十二条の十七の四第三項において同じ。)に係る普通地方公共団体の行政庁(当該是正の要求又は指示があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁)を被告として、訴えをもつて当該普通地方公共団体の不作為の違法の確認を求めることができる。

~省略~

他、地方自治法252条では、国が、都道府県の執行機関に対し、高等裁判所に対して自治体の不作為の違法の確認を求めるよう指示をすることができるという規定もあります。

大村市議の村崎議員は以下質疑していました。

村崎市議 ちょっと基本的なことなんですけれども、おっしゃったのは自治の裁量で、住民票については自治の裁量であるということでずっとおっしゃってたんですが、そこを総務省に妥当かどうかって聞かなければならないのでしょうか。自治の裁量であればそこは聞く必要は無いのかなと私は、全員協議会で聞くかは迷っていたんですけども、一般質問取ってたので聞かなかったのですが、自治の裁量でご判断されたということであれば、総務省にお伺い立てる必要すらなかったんじゃないのかなと思うんですがそれについていかがでしょうか。

大村市のこのようなチグハグな態度からは、自分らのやっていることに対する後ろめたさを感じていたのではないか?と思わざるを得ません。

大村市のような記載方法は、公文書上で実態と異なる内容虚偽の記載をしていることになり、これは虚偽公文書作成罪(刑法156条)乃至は同行使罪(158条)の疑いがあります。

*1:【住民票の続柄・同性事実婚問題】行橋市議会の質疑答弁が引き出す国の対応:大村市長の虚偽公文書作成罪の成否 – 事実を整える
*2:仙台市が答弁「同性パートナーの住民票続柄「未届」表記は行っていない」 – 事実を整える


編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年7月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。