5類に移行してからは、日本のメデイアが海外におけるコロナの流行状況を伝えることがめっきり減った。これまで、ヨーロッパ、豪州、東アジアにおけるコロナ流行の最新情報を報告したが、今回は米国の状況について紹介する。
これまで、何回か紹介したWorldometerでは、米国の新規コロナ感染者数は、2024年4月12日以降は更新されていない。
米国疾病予防管理センター(CDC)は、コロナの流行を、
- 下水中のコロナウイルス陽性率
- 救急外来受診者のうちコロナ陽性者の占める割合
- 急性期病院におけるコロナ陽性入院患者数の割合
- コロナによる死亡数
でモニタリングしている。
神奈川県では、相模川流域の下水道のコロナウイルス量をモニタリングしているが、下水中のコロナウイルス量の動きが、新規患者数の動きよりも先行している(図1)。
図2には、米国における下水中のコロナ検出率を示す。7月に入って検出率は増加しており、とりわけ、カルフォルニア州をはじめ19の州で非常に高くなっている。検出される変異株は、KP.3が33%と最も多く、KP.3.1.1が18%、KP.2.3が13%と続く。
救急外来受診者のうちコロナ陽性者の占める割合も、7月に入ってから増加している(図3)。
図4は、入院患者のうちコロナ陽性例の占める割合を示すが、救急外来と同様に増加傾向がみられるが、救急外来受診者と比較すると、入院患者の増加はそれほどでもない。入院を必要とする重症患者の割合は多くないのだろう。
米国では、コロナによる死亡者数が最も多くみられた2020年〜2021年にかけては1週間の死亡数は、25,000人に達していた。今年は、7月に入ってからもコロナによる死亡数は500人以下で、コロナの流行が始まってからこの4年半でも、最も低いレベルである(図5)。現在流行している変異株の毒性は、強くないのであろう。
米国は日本と同様に生後6ヶ月以上の乳幼児にもコロナワクチンの接種を進めている数少ない国である。昨年9月以降のブースター接種率は、今年の5月の時点で、18歳以上の成人でも22.5%、6ヶ月〜4歳では3.4%に過ぎない(表1)。
米国では、7月に入ってコロナの新規感染者数は増加しているが、入院患者や死亡数は増えておらず、医療の逼迫はみられていない。日本では、感染症専門家が、あいも変わらずマスクの着用やワクチン接種を呼びかけているが、呼びかけにあたっては、海外の最新情報も考慮すべきではないだろうか。