アメリカとイスラエルによるイラン攻撃は予想していた通り、大勢はイランが押される形になるも部分的な抵抗が続く中、ホルムズ海峡を事実上封鎖するという手段に出てきました。武力で劣勢に立つイランが世界に最も影響力を与えられるのはこのホルムズ海峡を封鎖することであり、これが長期にわたるような場合、世界経済、特にアジアは大混乱に陥ります。
日本の場合、原油の備蓄は254日分あるから当面は大丈夫、という高市首相の発言は実はわきが大甘の話であります。つまりホルムズ海峡が如何に船舶航行上脆弱なところを通過するのか、理解していないのではないか、とすら思うのです。

高市首相 首相官邸HPより
まず、アメリカがイランと何時まで戦う気か、という疑問があります。トランプ氏の発言がぶれているので断定できませんが、最新の情報では4つの目標なるものを掲げています。それはミサイル能力排除、イラン海軍の破壊、核への道を断絶、テロ行為の封鎖で、そこには体制転換は入っていません。このあたりも理解に苦しむのですが、最近のトランプ氏の判断ベースからすればいずれにせよ、徹底的にやるのだろうとみています。第1弾の攻撃はホメイニ師をはじめとする主要な反米人物の殺害を実行し、実質完了したとみています。これから実質第2弾に入るわけですが、これは新政府との交渉であり、相当の時間がかかるとみています。
その間、ずっとホルムズ海峡が封鎖されるのかが経済上の最大のリスクです。とすれば原油価格は上昇を続けるので今、市場で言われているバレル当たり100㌦は戦争の時間軸が長ければ起こりうる可能性は十分にあります。また、イランが同海峡を実力封鎖する方法はいろいろありますが、機雷をばら撒く場合、問題解決後もその撤収回収に時間がかかり、半年ぐらいはすぐにたってしまう危険性があります。ましてやそこでタンカーが沈没でもすればその撤去には膨大な時間がかかるのであります。
日本はそのあたりのリスクを甘く見ており、アメリカが仮にイラン中央政権をねじ伏せたとしてもホルムズ海峡で船舶が安全に航行される話にはつながらないのです。
1970年代にオイルショックが起きた際、日本は中東からの原油に頼りすぎることを反省し、原油輸入先について中東以外の調達先を1973年の22%から90年代には30%ぐらいまで増やしました。しかし、日本政府は何故か、このあたりから再び中東に傾注していきます。特に近年は中東諸国との経済的結びつきもあり、2024年においては中東以外の調達先はわずか4%にとどまっているのです。個人的には政府や経済産業省の政策への疑問、及び安全安定第一の日本が世界情勢を甘く見たと言わざるを得ないのです。
「もしも」の話はあまりしたくないのですが、原油価格が100㌦に向かって上昇する場合、日本政府はガソリンや電気、ガスなどへの補助金行政を再び検討する必要があるほか、原油調達先について再度見直しをする必要があるとみています。経産省の方に「日本はなぜカナダから原油を買わないのか?」と疑問を投げかけたこともあるのですが、ロシアからの調達が実質難しい以上、カナダ、アメリカ、メキシコの3国からの調達の検討は欠かせなくなるはずです。
ホルムズ海峡封鎖による原油不足は中国、韓国も同じで原油争奪戦が始まれば目も当てられない状況になるはずです。トランプ氏は自国で原油が出るのでそのあたりの繊細さは全くありません。今回の問題によりガスやLNGにも影響が出るため、欧州でもガス価格が急騰するなど市場の初期反応は思った以上にシリアスに感じます。
もう1つの可能性はこういう事件をきっかけに日本の消費行動の変化が起きやすい点です。ずばり、電気自動車への傾注が起こる可能性は否定しません。もちろん、これは原油価格が長期的に高値となる場合の話で可能性は低いと思いますが、「市場マインドはうつろ」である点は指摘しておきます。
今世紀に入ってからの日本の原油政策はごく単純に言ってしまえば、2000年の輸入量が2.54億キロリットルだったものが2024年には1.36億キロリットルまで減少しているのですが、その減少分を中東以外の調達先にしているのであります。あまり話題にならなかったのですが、多分、政治なのだと思います。この点はあまり指摘されてこなかった事実でもあり、ブレーンストーミングとしては重要なテーマになるのではないかと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年3月3日の記事より転載させていただきました。







コメント
> 日本の場合、原油の備蓄は254日分あるから当面は大丈夫、という高市首相の発言は実はわきが大甘の話であります。
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> また、イランが同海峡を実力封鎖する方法はいろいろありますが、機雷をばら撒く場合、問題解決後もその撤収回収に時間がかかり、半年ぐらいはすぐにたってしまう危険性があります。ましてやそこでタンカーが沈没でもすればその撤去には膨大な時間がかかるのであります。
まずトップの除去に成功したトランプ氏の作戦は、、次は武装勢力を無力化することでしょう。この「武装勢力」には、ホルムズ海峡を封鎖するための諸手段も当然含まれるわけで、海峡付近のイラン側のミサイル基地や軍港が次のターゲットになることはほぼ確実と思われます。
ホルムズ海峡の安全な航行まで半年かかるとしても、さしあたり原油は備蓄で何とかなるわけですが、問題は天然ガス(LNG)で、こちらは一月分の備蓄もないはずです。
ホルムズ海峡を通らずに入手できるLNGもなくはなく、米国メキシコ湾岸やオーストラリア西部やカナダにLNG積み出し設備があります。こちらからの入手を手当てしなくてはいけないのですが、どうなっているのでしょうか。当然何らかの手は打っていると思うのですが。特に、米国に関しては、元々の原因が米国にあるだけに、トランプ氏の何らかの配慮があってもよさそうなところ。ここは高市氏の出番ではないかと思います。
その他、天然ガスの主成分「メタン」は、他から合成することも可能で、例えば石炭コークスと水を反応させて作る水性ガス(水素と一酸化炭素の混合気体)から、メタネーションと呼ばれる化学反応によって合成することが可能です。石炭コークスは、我が国の製鉄所でも大量に扱っていますから、製鉄所の一角にメタン合成設備と液化設備を設ければ、LNGを石炭から生み出すことができるようになります。
石炭は固体ですから、野積みすれば大量に備蓄することも可能ですし、資源も中東以外の各地に広く存在し、入手が途絶える心配も少ない。こうした配慮もしておくのが良いのではないかと思います。いずれにしても、天然ガスは30年程度の埋蔵量しかなく、100年以上の埋蔵量を誇る石炭に比べれば短命なのですね。だからその先の天然ガスの入手を考えれば、こうした技術を準備しておくことは無駄ではないはずです。
もちろん、より先を考えれば核融合などの新しいエネルギー技術をものにすることが大事なのですが、まあこれは、一朝一夕にどうなるものでもなく、ホルムズ海峡の封鎖とは別に考えるべき課題でしょう。