
The White Houseより
反トランプ記事の多い米政治メディア『Politico』のメルマガ「Playbook」は3日、米国とイスラエルが仕掛けたイランへ奇襲、すなわちハメネイ斬首作戦の評価がMAGA内部で割れていると書いた。記事にはTucker Carlson. Megyn Kelly. Matt Walsh. Mike Cernovich. Candace Owens. Sean DavisらのXポストなどが挙げられている。
Carlsonはイラン奇襲を「忌まわしく邪悪」と友人に伝え、保守系メディア『Daily Wire』の寄稿者WalshはXに「イランは47年間我々に戦争を仕掛けてきたと保守派は言うが、では何故これまでイラン攻撃を呼び掛けなかったのか? 何故トランプが“戦争を始めるのではなく終わらせる”と攻撃を仕掛けるまで黙っていたのか?」とポストした。
同じく保守誌『Federalist』の共同創業者Sean DavisもXに「目標はイラン政権の打倒か、イラン国民の解放か、核能力の弱体化か、通常兵器能力の弱体化か、地域覇権の排除か、中国への石油供給遮断か、イスラエル支援か、それとも何か? 一貫したメッセージの欠如は、一貫した目標の欠如を示唆しているようだ」と書いた。
Matt Walshのポストは、47年間の戦争を終わらせるための攻撃と評価し、トランプを支持していると読める。が、Davisの方は、日々日本のTVで「思いつき」とか「出口戦略がない」などとトランプを腐しているコメンテーターや米国通や中東通を自称する、実はトランプ嫌いの学者の発言に似る。が、いったい「戦争目的は一つであるべき」などという道理はいつ出来たのか?
トランプがフロリダから行った演説の中で、Davisが論っている事の多くは「Operation Epic Fuery」の目的として述べられている。そしてそれらの核心は、2月24日にホワイトハウスのサイトが掲げた「President Trump’s Peace Through Strength: Renewed American Leadership and Global Security」に基づく「平和の希求」と解すべきである。
そして「なぜ今なのか」といえば、ハメネイがその日の朝、側近とイラン革命防衛隊(IRGC)の幹部ら40余名を、愚かにもテヘランの自邸に集めていたからだ。CIAとモサドを使ってハメネイの行動をここ何年も追跡し続けてきた米国とイスラエルにしてみれば、大勢の側近もろともハメネイを屠る年来の好機が訪れたのである。「なぜ今なのか」などは愚問中の愚問というべきだろう。
次期大統領選に備える民主党の有力候補ら、すなわちバイデン政権のカマラ・ハリスVP、ミュンヘン安全保障会議で無知ぶりを晒したオカシオ-コルテス(AOC)、行政府最高位の同性愛者の座をベッセント財務長官に譲ったピート・ブテジェッジ前運輸長官らが、口を極めてトランプの決断を批判している。その論旨はハリスの「unnecessary … war of choice」に収斂する。
が、イランのラバンチ外務次官が米代表に対し、同国が保有する60%の高濃縮ウランの濃縮度を引き下げる案に言及したことを、彼らはどう理解するのか。核開発を断念した訳ではないし、60%濃縮ウランは10日で兵器級の純度90%まで濃縮できる。ハリスらの発言は、イランが秘密裏に核兵器を完成させ、それをイランを資金源とするハマスやヒズボラやフーシ派などテロ組織に渡しても構わないとしているのに等しい。そんなことでは世界が困るのだ。
日本の学者の中には「トランプ自身がドンロー主義を理解していない」などと持論を述べる輩もいる。周知の通り「モンロー主義」とは2百年も前に「大陸と米州は互いに干渉しない」という、発展途上の米州を守るものだ。他方、「ドンロー主義」が「他国に西半球を干渉させないが、米国は他国に干渉する」ものであることは、ここ1年のトランプ外交をみれば明らかだ。それはオバマが放棄した「世界の警察」のリメイクで、目的がノーベル賞だろうが、中間選挙勝利だろうが構わないのである。
国際法を盾にトランプのベネズエラやイランに対する政策を非難する勢力もある。田村共産党委員長は2日、「イランに対する米国とイスラエルの先制攻撃は明白な国連憲章違反だ」と非難した。「台湾有事答弁」の撤回を求めるのも同じ勢力だ。が、それによって長年平和が維持された日米同盟下の日本が「Trump’s Peace Through Strength」を頼りにし、支持するのは当たり前のことだ。
もう一つ忘れてはならないのは、ベネズエラもイランも自国民を虐げることを厭わない強権国家であること。それは「米国が許しても国民が許さないなら意味がない」として、ポツダム宣言の「・・日本国国民の自由に表明された意思に従って、平和的傾向を持ち責任ある政府が樹立されたならば、連合国の占領軍は直ちに日本国から撤収されるであろう」との文言を受け入れた昭和天皇の姿勢とは対極にある。
イランによるホルムズ海峡封鎖に触れれば、イランがこの奇襲に中立的だったサウジ、UAE、クウェート、オマーンなどの民間施設にまで攻撃を仕掛けたことと同様にまったくの愚策である。せめて米軍基地だけに留めれば中立を守る可能性があったが、石油関連施設を攻撃するなどは逆上して我を忘れたとしか思えない。
これによって中国もロシアも、トランプは国際法を守れ、と我が事を棚に上げる発言をくり返すのが精々で、何らイランを庇えないことが決定的になった。CJCSダン・ケインが「弾薬が足りない」とトランプに述べたとの未確認情報が流れるが、海峡の封鎖で自らも封鎖してしまったイランが早晩、先に「刀折れ矢尽きる」ことは誰の目にも明らかだ。封鎖は長びくとは思われない。
最後に表題に戻れば、トランプ関税にしろ、この「Operation Epic Fuery」にしろ、トランプの政策目的は一つではなく、常に「複合的」である。実業の世界で「deal」を駆使して伸し上がったトランプ流の政治は、専門知しか持たない学者や役人上がりの評論家らの理解を超えている。「TACO」と馬鹿にするは良いが、「吹っ掛けて譲る」のも「そう出れば、こう出る」のも「deal」の常套手段だ。彼の政治はレトリックではなく結果に目を向けないと判断を誤る。







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