「行き詰まり」を見せるアメリカとイランのにらみ合い

アメリカとイランの間の一時停戦は続いているが、交渉は行き詰まりを見せている。トランプ大統領は、週末に合意に向けた決断を行うかのようにほのめかしていたが、合意はなされていない。「米国政府関係筋」から、「米ニュースサイトのアクシオス」などのメディアを通じて、頻繁に「合意が近い」などの観測記事が出てくるが、ほとんど現実化することがない。

トランプ大統領 ホワイトハウスHPより

一時期は過敏に反応していた原油市場や株式市場の関係者も、さすがに最近はこうした観測記事にほとんど関心を寄せていないように見える。それでも日本のメディアは、せっせと律儀に毎度毎度「米ニュースサイトのアクシオスによると米国間政府関係者筋が・・・」の記事を書き続けている。

合意の相手方であるイランのほうは、一貫して合意が近いことを否定している。それでも意地を張るようにムキになって「米ニュースサイトのアクシオスによると米国間政府関係者筋が・・・」の記事を書き続けている日本のメディアは、相当に度胸がいい、というか、よほど浮世離れしている、と感嘆せざるを得ない。

アメリカとイランの交渉の行き詰まりは、客観的な事情によるものだ。

アメリカとイラン:交渉における「行き詰まり(deadlock)」について
アメリカとイランは停戦後も交渉が進まず、双方が軍事的・政治的に「行き詰まり(deadlock)」状態にある。米国はイランの軍事力を決定的に無力化できず、イランも米国・イスラエルに決定打を与えられない。このため交渉は停滞し、双方とも譲歩を拒ん...

確かに、イランとの戦争を始めたアメリカが撤退するのであれば、状況は大きく変わるだろう。しかしそれが簡単ではない。トランプ大統領は、厳しい判断を回避したまま、あたかも状況を自由に左右できるかのような虚言的な発言を繰り返しているが、そのまま信じることはできない。

3月に『言論アリーナ』に出演させていただいた際に私が述べたように、アメリカ・イスラエルの対イラン戦争は、超大国の驕りによる状況判断の誤りによって始まった戦争だ。アメリカの思い描くシナリオで戦争を終わりにしていくことは非常に難しく、危機は長期化する傾向を強く持っている。

日本の高市政権の態度は、アメリカの早期勝利を確信していたかのようなものだ。「抜け駆けはしない」という立場で、ホルムズ海峡の通過をめぐるイランとの交渉を拒んできている。結果として、ホルムズ海峡を通過しない交通路の開拓を通じて社会機能を維持する必要性に迫られている。それが可能なのかどうかは相当に怪しい。仮にある程度は可能になるとして、そこにかかるコストは、甚大だ。

先行きの見通しがつかない状況が続く。そうこうしているうちに、この問題を扱う私の本が公刊されることになった。『トランプの戦争とアメリカの敗北:イラン攻撃を招いた「ドンロー主義」の正体』(ビジネス社)は、6月1日Amazon先行発売、6月3日書店発売である。

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