皇室典範改正案と「立法府の総意」
立法府の総意を踏まえた皇族数の確保に向けた皇室典範の改正案が10日に審議入りし、その日のうちに衆議院を通過する見通しとなった。ただ、与野党伯仲の参議院では熟議が行われる可能性がある。
それでは、「立法府の総意」とは何かだが、正式名称は、『「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する付帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応」に関する衆参正副議長による議論の取りまとめ』である。
これは、令和4年(2022年)1月に、衆参正副議長が、岸田内閣総理大臣から、両議院でそれぞれ議決した「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する付帯決議」に基づく政府における検討結果の報告、いわゆる「有識者会議報告」を受けて、衆参両院において議論を重ね、その結果として「立法府の総意」として取りまとめたもので、骨子は以下の2点だ。
- 今上陛下から秋篠宮皇嗣殿下、次世代の悠仁親王殿下という皇位継承の流れを揺るがせにしてはならないことについては、立法府としてもこれを確認する。
- その上で、「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する付帯決議』に関する有識者会議」が取りまとめた報告書の第1案(「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとする」)及び第2案(「皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする」)は、いずれもこれを了とし、この取りまとめを基に法制化することを求める。

愛子内親王 宮内庁HPより
愛子天皇論が棚上げされた経緯
そもそも、小泉内閣のときに、女性天皇や女系継承を認めるという案が検討されたが、男女問わず長子優先という無意味にラディカルな案だったこともあって反発が強まるなかで、奇跡の子として悠仁さまが誕生した。
もし、女帝派・女系派が賢明なら、悠仁さまの誕生前に、長子優先をやめて男子がいなかったら女性天皇という改正案を小泉首相が出せば通ったかもしれないが、安倍官房長官から「すでに宿った生命が男子だったらその子から継承権を奪う」と言われて、小泉首相もあきらめた。
この流れから、悠仁さまが生まれた段階で愛子天皇論は消え、悠仁さまに男子がいなかったらどうするという議論になっていたのである。そして、野田内閣のときには女性宮家論が台頭したが、政権交代で旧宮家の何らかの形での復活論が台頭した。それは眞子さま騒動で、皇室に残留した女性皇族の夫を皇族とすることへの疑問が説得力を増し、安倍首相のイニシアティブでの皇室典範改正が進められようとした。
しかし、2016年に上皇陛下が早期に退位したいとの意向を表明されたので、その法制化が急がれることになり、特例として上皇陛下の退位を認めた。また、それと同時に皇嗣となられる秋篠宮殿下が皇太子と同格の皇嗣殿下となられ、国事行為として立太子令と同等の、次期天皇の地位を約束する立皇嗣礼をすることも法律で決められた。
いわば、愛子さまでなく秋篠宮殿下が次期天皇であることを国会が確定させたのである。もちろん、皇室典範を改正すれば何でもできるが、あまりに皇室問題を軽く扱いすぎであり、常識的な考え方ではなくなった。
そして、より具体的な皇室のあり方を検討するための有識者会議が国会の付帯決議で設けられ、その報告が出され、それに従って、今回の国会の総意がまとめられたのであって、愛子天皇論を持ち出すのは、何重にも国会と政府が重ねてきた合意形成のプロセスを無視したものだろう。
国民が十分に理解していなかったなどと言うが、マスメディアや有識者と言われる人たちは、それぞれの段階で周知をさせ、異を唱えるべきだった。何も秘密主義的に行われたわけでもない。これまでの積み重ねに、いまになって卓袱台返しの議論をするのはいかがなものか。
悠仁さま以降こそ本来の論点
こういう経緯があるから、野党も悠仁さままでの継承には異を唱えていないし、テレビに登場する女系継承容認と言われる人たちも、改めて確認すれば、悠仁さままでの継承はとっくに決まったこととおっしゃる。
有識者会議の報告も、今回の国会の総意も、政府が出している皇室典範の改正案も、それをよく読めば、悠仁さま以降の継承について、何も前提条件を置いていない。悠仁さまに男子の継承者がいなかった場合に旧宮家からの養子か、女性天皇や女系天皇を認めるかはまったくニュートラルだ。
また、悠仁さまの第一子が女子だったらどうするかも問題だ。ただ、もし弟が生まれても姉が優先とするのなら、弟が生まれる前に皇室典範を改正すべきだろう。
にもかかわらず、愛子天皇論というこれまでの議論の本筋から外れた議論が騒がしいので、本来の問題である、悠仁さま以降の女性天皇や女系継承を議論できないでいるのは、女系派にとっては残念なことではないか。
一方、保守派の方は、せっかく旧宮家からの養子制度という念願の制度が実現するのだから、まずはそれでよしとすればいいものを、将来ともに男子男系を続けることを確定させることに欲を出しすぎだ。
政府案に、旧宮家から養子になった本人に皇位継承権がないと書けば、その子はあるというのは当然であって、ただ、具体的にどういう順位になるかなどが問題だが、それは今決める必要もない。
本当のところ、旧宮家からの養子制度がうまく機能するかどうかは、やってみないと分からないのだ。ただ、この制度があることで、男子男系の伝統を守ることを容易にすることで満足すべきなのだと思う。
それをあえて、継承権があると法律で定めたり、養子間での継承順位を定めようというのは反発を受けるだけだ。
皇室制度全体の課題と将来設計
また、別の機会に書くが、いまの皇室制度は問題だらけだ。皇族の教育がうまくいっているとはとうてい思えない。
悠仁さまの帝王教育は、秋篠宮殿下ご夫妻の奮闘と、上皇陛下御夫妻のかなり強いアドバイスで、今のところ満足すべきものに見えるが、両陛下との連携が強化されるべきだ。2代前の国王の甥であるベルギーのフィリップ国王の立場は、悠仁さまとまったく同じだからもっとも参考になるはずだ。
愛子天皇論を言うなら、ベルギーのエリザベート王女などに施されている厳しい教育を採り入れるべきだったし、現在の制度で結婚して民間人になるにせよ、皇室に残るにせよ、なんとも中途半端だ。昭和天皇の皇女たちは、皇居を出て一般家庭で花嫁修業までされていたのであるし、キャリアウーマンとして活躍できるような教育がされているわけでもない。一方、養子になった旧宮家の男子の教育はよほど工夫すべきだろう。
また、悠仁さまや佳子さま、愛子さまの結婚相手探しも、宮内庁で強力な有識者組織でも形成すべきだと思う。
また、旧宮家からの養子に伏見宮家のなかでの長子優先で順位をつけることになっているが、これだと、昭和天皇や明治天皇の血を引かない賀陽家、ついで久邇家から養子を取ったら、それが上位になるのだが、それでいいのだろうか。やはり男系男子は必要条件としつつ、現在の皇室との血の近さも加味するのが歴史的伝統だと思う。
とすれば、とりあえず、昭和天皇の子孫である東久邇家からだけ養子を取って、もし愛子さまや佳子さま、あるいは将来において悠仁さまの女子などが旧宮家の男子と結婚すれば、追加して養子に取るとでもするしかなくなる。血縁においても交流においても、現皇室と非常に関係が疎遠な賀陽家への継承では、それこそ王朝交代に近いものになる。
私は上皇陛下退位と同じ年に悠仁さまが退位されるとすれば、2092年のことなのだから、急ぐ必要はないと思う。もし悠仁さまに男子がなければ、過渡期的には10年とか20年で交替制にするのもあってよいのではないか。奈良時代から江戸時代はそうだったし、海外でも例はある。そういう考え方なら、女性天皇も男系男子派にも理解される形で、円滑に誕生させられるのではないか。
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