三村財務官の「今回の協調介入は日米通貨同盟の完成型」は問題発言だ

中村 仁

1ドル=165円に迫った円安に対する日米協調介入が行われ、28年ぶりの円買い為替介入となりました。ベッセント米財務長官、片山財務相がその意義を強調すればするほど、通貨をめぐる事態は深刻で根深い問題になっているとの認識を両国が抱いていると表明するに等しい。

積極財政、消費税減税に走る高市首相の財政金融政策に、米国は重大な懸念を抱いているに違いない。米国債市場に波及しかねない高市財政に警告を発したのだと思います。日米の「結束は強い」というより、そうでもしないと、米国市場にも重大な影響が波及するという認識なのでしょう。

「通貨同盟」は不用意に使う言葉ではない

それ以上に私が驚いたのは、三村・財務省財務官の「今回の介入はいわば日米通貨同盟の完成型だ」という発言です。米側が言っていないのに、官僚が独断で「日米通貨同盟の完成型」と語れるはずはない。恐らく片山財務相、あるいは高市首相に「そこまで言いなさい」とけしかけられたのでしょうか。

「通貨同盟」とは、経済学的には、複数の国が単一通貨を共有することを意味します。通貨統合ともいいます。ユーロ圏の共通通貨「ユーロ」が最も有名です。ネットで検索すると、東カリブ海の8か国による東カリブ通貨同盟、中部アフリカ経済通貨共同体、西部アフリカ経済通貨同盟などで共通通貨が発行されています。

地域の有力国の通貨を使用する「事実上の通貨同盟」もあります。米ドルは複数の中南米諸国で使われています。独自の通貨を持てない小国が、有力国の通貨を国内に流通させるのです。

日本経済がドル支配に入り、独自の金融政策はとれない

「日米通貨同盟」とすれば、日米が共通通貨を持つことになる。ドルと円の一体化とは、日本がドル経済となり、円に代わって国内でドルが流通することだ。日本独自の金融政策はとれなくなる。財政政策も拘束される。日本独自の財政金融政策はとれない。そんなことを認められないとすれば、「通貨同盟」はあり得ない。

三村財務官の「日米通貨同盟の完成型」は、比喩的に言ったとしても、軽率な発言だと思います。日米の外交、政治、経済などの国力の格差からすると、通貨同盟を結べば、円は米国の支配下に入ることを意味する。

もっとも、米国債(発行残高38兆ドル)の最大の保有国は日本で、1兆1100億ドル(176兆円)です。日本が米国債の投げ売りを始めたら、米国金利は上昇しますから、米側にも弱みがあります。日本側は「そういう意味では対等な立場という側面もあり、同盟は対米従属ではない」という気持ちなのでしょう。

それにしても、「日米協調介入の完成型」ならまだしも、「通貨同盟の完成型」という表現は米側は使っていませんし、日本側の虚言ともいえる。円相場を1ドル=160円まで戻すという悲願があるのでしょうか。「完成型」なのに、円安が160円以上に進んだら、どう言い訳をするのだろうか。

円安投機は日本の超低金利が根源にある

片山財務相はこれまで、「行き過ぎた円安には断固たる措置を果断にやる」などと、口先介入に懸命です。基本は財政規律の確立であり、高市首相も「これまでの過剰な緊縮財政を修正する」などという虚言を吐かないことです。これまでは、日銀による財政ファイナンスで拡張財政を続けてきたのに、「これまでの緊縮財政を修正」というのなら、データを示せ。そのようなデータはありません。

ベッセント長官は「アベノミクスの段階は終わり、タカイチノミクスの時期だ」(日経とのインタビュー)と主張しています。消費税減税も無茶な話だと、長官は考えているのでしょう。

「行き過ぎた投機」とは何なのか。日本の超低金利(政策金利は1%)で借りた円をドルに転換し、米国債や米国株その他で運用する円キャリー取引を行えば、利ざやを労せずして稼げます。これが円安を招く投機資金の源泉でしょう。「最近の円安は行き過ぎた投機」というのなら、まず自ら円金利を引き上げよ、ということです。投機を招いているのは、財務省と日銀にほかならない。


編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年8月6日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント