ども宇佐美です。
最近twitter界隈で「アンチ小池の筆頭」と思われているようで、やや心外なのでここで築地移転問題に関して思うところを書き残しておきます。
まず私は小池知事が大嫌いですが、これから最低3年半は小池知事が都政を担うことを受けいれており、「小池降ろし」のようなことを主張する気はありません。ただ小池知事及びその周辺の都議会議員や支持者と目される方々の情報発信があまりに偏っているので、間違いを指摘しているだけです。なお私の豊洲市場に関する認識は以下の通りです。
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① 豊洲の大気は環境基準を満たしており全く問題ない
② 豊洲の土壌そのものの汚染は除去されている
③ 豊洲の地下水は汚染されているが、地下水は利用しないので、摂取経路がなく全く健康被害が生じるおそれはない
④ ただし環境基準を満たせない「形質変更時要届出区域」である以上、リスク管理の観点で地下水のモニタリングは”永続的に”続けるべきである。これは土壌汚染対策法で推奨される”国策”である以上仕方がない。
⑤したがって ベンゼンが環境基準の79倍を超えても「食の安全」とは何ら関係ないが、リスク管理の観点から原因は究明すべきである
⑥ 地下水管理システムは機能しており、排水基準は満たしている。よって地下水の汚染は拡散されない。
⑦ 地下ピットはメンテナンス、漏水対策上有用な空間である。そもそも技術会議資料で設置は了承されており、手続き上瑕疵はない。問題化したのは単なる都のコミュニケーションの失敗である
⑧ 豊洲の建築は構造安全性が確保されている
⑨ 「地下水を飲めるくらい綺麗にしてから開場する」という石原都政下での発言は、2014年9月11日の港湾委員会で修正され、舛添知事が2014年12月9日に知事会見で安全宣言を行った
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別にこれは事実認識として言っているだけで「アンチ小池」という観点で行っているわけではありません。というか事実を指摘したら「アンチ小池」扱いされる現状の政治の歪みに恐ろしいものを感じます。
一応⑨においてのみ補足すると、2014年9月11日の港湾委員会で以下のようなやり取りがなされています。
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○かち委員 都の土木材料仕様書では、その品質について、化学物質についての規定はありません。しかも、現実に各地でアスベストや鉄鋼スラグの混入が問題になっているわけですから、そのチェック体制がなくては安全性を担保することはできないということを申し上げておきます。二年間のモニタリングによって浄化を確認した上でも、基準値の十倍以下ではあるが基準値を超える発がん性物質のヒ素は、自然由来のものとして浄化せず、封じ込めているわけですから、形質変更時要届け出区域という区域指定は解除することができないということを改めて確認しますが、どうですか。
○若林基盤整備担当部長 過去に答弁してきましたように、豊洲新市場用地におきましては、自然由来の物質が存在することから、対策工事終了後も、形質変更時要届け出区域が残ることとなります。なお、豊洲新市場用地における都の土壌汚染対策は、ガス工場操業地盤面から下二メートルの土壌を汚染の有無にかかわらず、全てきれいな土と入れかえることに加え、さらに二・五メートルをきれいな土で盛り土するなど、自然由来についても法の求める対策を上回る二重、三重の封じ込めを行うこととしております。
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このやり取りを要約すると、
かち委員:「環境基準値を超えるヒ素が地下水から出ているが、このまま(形質変更時要届出区域が残ったまま)市場をオープンするのか?*」
<*形質変更時要届出区域を解除するには2年間のモニタリングで環境基準を満たすことが必要>
若林部長:「おっしゃる通りです。地下水の環境基準を満たすことはできません。だから形質変更時要届出区域は残ります。でも二重、三重の対策をしているから大丈夫です。」
ということになります。そんなわけでこの時点で明確に都は「地下水を環境基準以下にする」という目標を放棄しています。そしてそれを受けて、舛添知事が12月9日の会見で以下のような安全宣言を出しています。
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【記者】じゃあ、市場関係者とか外に向かってここは安全ですよと宣言したということとイコールだと捉えても大丈夫なわけですか。
【知事】大丈夫ですよ。間違ってほしくないのは、それがなければ開けないというマストの条件ではありませんけれどやったということ。よく誤解があって、それもやっていないのに開くのか、それやって結果が出たらどうなると。その因果関係は法律上は全くありませんということを申し上げたいので、私はこれで十分安全であると、ですから市場を開設しますということを、責任持って申し上げたいと思います。
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このように舛添知事は間接的な表現で「地下水を環境基準以下にする」という条件が意味がないから放棄して安全宣言を出す旨を伝えています。この点「もっと正々堂々と方針転換を明らかにすべきだった」という意見を音喜多都議や柳ヶ瀬都議がしていますが、なんつーか「そりゃあんたらの目が節穴だっただけだろ」って言う話だと個人的には思っています。その上彼らの主張は「地下水を環境基準以下にすると言う目標は過剰」というものなのですから、単なるポジショントークをしていることが見え見えなので興ざめしています。
そんなわけで私は豊洲をめぐる政局に心底うんざりしています。
そもそも「豊洲か築地か」というテーゼは間違っているというのが、私の本音です。築地が老朽化していることは誰の目にも明らかですし、今から抜本的な対策を取る時間も金もないので、中央卸売市場機能に関しては移転しか解決策がありません。
他方で築地には観光資源としての無形財産があり、それが豊洲移転とともに失われてしまうことは避けなければなりません。今日も池田信夫氏と築地をぶらついたのですが”古き良き昭和”を思わせる街の雰囲気と、レベルの高い飲食店に魅せられました。なので「築地の魅力を保存したまま、どのように豊洲に中央卸売市場機能を移転するか」と言う観点でwin-winの解決策を本来は東京都は探るべきです。
都知事も都議会議員も政局に夢中で建設的な議論が一切行われず、石原元知事を血祭りにあげるのに一生懸命になっているのを見ると、一都民として情けなく、泣きたくなります。百条委員会なんて意味のないことはさっさとやめて、早く「築地の魅力保存と豊洲への市場機能移転」を両立する道を議論してほしいものです。つまり
都民ファーストで行こうぜ!
ということです。ではでは今回はこの辺で。
編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2017年3月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。