今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、こんなニュースが話題となりました。
東大は女子比率が20%という大変男くさい大学なので、何とかその比率を引き上げるのが狙いだそうです。案の定、「男女差別じゃないか」とか「ほかにやることないのか」とか諸方面から叩かれまくっていますが。
ところで、そもそもどうして東大ブランドは女子に魅力がないんでしょうか?そこを紐解いていくと、個人と組織にとって本当に必要な改革が見えてきます。
総合職カルチャーの頂点に君臨してきた東大
東大に入る最大のメリットとは何か。それは「大企業や中央省庁といった日本型長期安定雇用のレールに乗りやすい」ということです。総合商社とかメガバンク、自動車、鉄鋼、そして電通etc……
そういう誰でも知っている有名な大企業に新卒カードを使って入社しようとするなら、“東大”という学歴は無類の強さを発揮してくれます。
一方、やはり就職先として人気のある外資系の高年収職(コンサル、金融機関等)は基本的にポテンシャル採用はしないので東大だからというだけで下駄を履かしてくれることはまずありません。あと近年はそうした外資は理系修士以上の採用が増えていて、東大といっても文系学部生だと普通に落とされる人が多いです。新興企業はどうかといえば、こちらは特に特定の大学が好きというのはなくて、能力と熱意のある人材に広く門戸を開いています。
というわけで、実際、東大生の多くは大企業や官庁に就職することになります。
それから、彼らはどういうキャリアをたどるのか。まず、どんな仕事を担当するか、勤務地はどこかといった決定権はすべて会社に預けます。残業しろと言われれば徹夜でも何でもしなきゃならないし、有給もせいぜい5割消化と言ったところでしょう。要するに裁量は少ないです。
給料も大手だからと言ってそんなに多いわけではないです。初任給段階では、他の中小企業と大して変わりはありません(むしろ中小の方が高かったりすることも)。そこからじりじり勤続年数と共に上がっていって、部長ポストまでいってようやく1000~1500万といったところでしょう。
ただし、リスクは非常に少なく抑えられます。普通に働いていればクビになることはまずないし、仕事できなくても45歳くらいまではジリジリ昇給させてくれます。たまに経営危機になったりする大企業もありますけど大手だと国が税金突っ込んで救済してくれます。
合コンでも会社名だけでモテるしローンも組み放題です。まとめると、裁量を会社に預けるかわりに、全力で守ってもらえる身分の一員として生きることになります。筆者はそういう慣習を“総合職カルチャー”と呼んでいますが、東大というのは、総合職カルチャーの頂点に位置する大学といっていいでしょう。
ただし、総合職カルチャーには大きな問題があります。それは、純然たる男社会だという点です。家庭内で誰かが長時間残業や全国転勤しなきゃならないなら、別の誰かが家庭に入ってサポートする側に回る必要があります。そして、企業はその役割を“専業主婦”という形で女性に押し付けてきたわけです。
たまに「専業主婦は日本の伝統」みたいなこと言ってる痛いオジサンがいますけど、戦後の高度成長期に一般化した割と最近の流行りもんですね。東大の上野千鶴子先生なんかは専業主婦のことを「社畜の専属家政婦」なんてズバリ言い切ってます。
つまり、女性からするとこんな感じです。青春犠牲にして受験勉強頑張って晴れて東大に入学しました、就活も頑張って有名大企業に入りました、でも職場はすごい男社会でぶっ倒れるまで残業させられました、結婚するとそれとなく上司に肩を叩かれました、出産時には露骨に肩を叩かれました、何とか復職できましたが出世の芽は完全になくなりました……
結果、日本の日本の男女平等ランキングはどえらいことになってるわけです。
言っちゃなんですけど、↑な状況で「月3万出すから、一生懸命勉強して東大おいで!」と言われても焼け石に水なんじゃないですかね(苦笑)
もし筆者に娘がいて、「もう一年頑張って東大行きたい!」って言ったら「どうしても東大じゃなきゃできないことがあるならいいけど、そうじゃなきゃその辺の女子大でいいんじゃね?女子で東大行ってもあんましいいことないから」ってアドバイスすると思いますけどね。
以降、
公立校復権が示す、東大の本当の危機
日本型組織での女性のキャリアデザイン
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2016年11月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。