“共謀罪”落としどころあれこれ④

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無辜の人を迅速かつ適切に救済するシステムの検討

テロ等の重大凶悪犯罪の実行を計画・準備する組織的犯罪集団の構成員であれば、準備段階であっても一網打尽にして被害の発生を未然に防止しなければならないのは当然のことであり、これこそ公共の福祉にかなっていることだと思うが、現実には本物の組織犯罪集団は用意周到で、そう簡単に尻尾を掴まれるようなことをしないのが普通だから、本物の組織的犯罪集団の摘発は困難を極めると思う。

自首による刑の減免制度を導入することにしたのは、組織的犯罪集団の仲間割れ、組織判事集団の構成員による密告を奨励する趣旨だろうと思われるが、こういった場合の密告なり自首が真実かどうかを判定するのは実際には相当難しそうである。

治安当局は、そういう密告なり情報提供を受けたら捜査に乗り出すはずなので、密告なり情報提供で具体的に名前が上がった人物は全員捜査の対象となると考えるべきだろう。

テロ等の典型的かつ重大凶悪な犯罪であれば、計画・準備の段階で一網打尽にして、万が一にでも他の場所や機会に犯行に及ぶようなことがないようにしなければならないが、テロ等の典型犯罪ではないいわゆる資金源犯罪のレベルになってしまうと通常の経済取引とどこがどう違うのか、不分明になってしまう。

マフィアや暴力団組織のように一見して明白に組織的犯罪集団と分かるような団体であれば、誰がその組織犯罪集団の構成員であるかの認定も比較的容易だろうと思われるが、著作権法違反や意匠法違反、法人税法違反のような犯罪の場合は、果たしてそういった違法行為の実行を計画・準備する団体が組織的犯罪集団に該当するか否かの判定は結構難しい。

私などは、それはとても組織的犯罪集団と言えませんよ、と主張する方だが、捜査当局がいや、これで十分に組織的犯罪集団に該当するのだ、と言われてしまえば、捜査当局の考えに抗うことは出来なくなってしまう。

一弁護士が、いや捜査当局のその法解釈は間違っている、などといくら叫んでも、検察官や裁判官がその考えを受け入れてくれなければ、結局は捜査当局の見解が通用してしまうのが犯罪捜査の現場の実情である。

密告や情報提供で無辜の人が組織的犯罪集団の構成員や組織的犯罪集団と密接な関係を有する者、と誤認されてしまう可能性はどうしても否定できない。

テロ等の重大な犯罪の実行を計画・準備する組織的犯罪集団を一網打尽にするためには、多少の犠牲は止むを得ない、場合によっては無辜の人を巻き込んでも仕方がない、などという見解を取る人なら、こういうことに何の痛痒も感じることがないのかも知れないが、私にはとてもそういう考え方は出来ない。

冤罪の発生は何としても防がなければならない、というのが、私の基本的な立ち位置である。

万一無辜の人を間違って逮捕したり、勾留してしまった場合にはどうしたらいいのだろうか、というのが私の問題意識の中にある。

無辜の人は絶対に処罰してはならない。
万一無辜の人を逮捕、勾留してしまった場合は、速やかに釈放するとともに、その被ったすべての被害を償って救済すべきである。
私は、そう考えている。

こういうことについて国会で十分に審議してもらいたいのだが、どうもこの国会では救済措置の在り方にまで議論が及んでいないようである。
現職の国会議員の皆さんに、そもそもそういう問題意識がないからだろうと思っている。

実に残念なことである。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年6月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。