二つの記事『世界と隔絶した日本のCEO意識』と『平成29年版通商白書に見るわが国企業の課題』で、情報通信(IT)を利活用した21世紀の企業経営に乗り遅れるわが国の経営者を批判した。これらについて「そんなことは分かり切っている。おまえはどうすればよいと考えているのか。」という質問をいただいた。投稿一覧
その答えは、以前の記事『雇用の流動化が働き方改革の本丸』でも紹介した、新経済連盟と文部科学省科学技術・学術政策研究所の共同アンケート調査結果に見つけることができる。
科学技術・学術政策研究所では、アンケートの結果に考察を加えてディスカッションペーパー(レポート)を最近公表した。レポートは、調査企業・回答者が第4次産業革命にポジティブで、「生産性向上や効率化・自動化の進展、新事業や起業のチャンスなど、また、働き方・雇用状況や生活スタイルなど社会的な変化」を受容する傾向にあるとする。一方で、レポートは「世界の経営者層の多くと比較するならば、まだまだ消極的」であると指摘する。その理由は、コスト削減など「守りのIT投資」に重点を置く従来からの日本企業の姿勢が調査企業・回答者に引き継がれている様子があるからだそうだ。
最初に触れた二つの記事への友人からのコメントで出色と思ったのは「わが国企業の多くが情報システム部門を設置し、現業の合理化だけを進めてきたことが失敗だった。」である。レポートによれば、新経済連盟の加入企業にも現業の合理化に終始する「守りのIT投資」が引き継がれているわけだ。一方で、他国企業はCIO(Chief Information Officer)を設置して攻めのIT投資を進めている。
これからの経営では、攻めの道具としてITに投資する必要がある。たとえば、人工知能AIは人の能力をさらに拡張する機会であり積極的に導入する姿勢が求められる。スタートアップ企業と積極的に連携するオープンイノベーションに向かう必要がある。ITへの積極性の差が企業の盛衰に影響を与える時代には、それに見合った経営戦略とそれを推進できるCEOが求められる。