といっても、別に恋愛の話ではありません。
仕事を辞める決断をしたあなたが優秀であれば、退職の意を告げられた勤務先は黙っていられるでしょうか。
会社側は、英語でcounteroffer=逆提案という名の引き止め策に打って出ることでしょう。
一度はあなたも惚れた相手=会社ですから、心が揺れるに違いありません。アメリカ人が最も嫌うマイクロマネジメントに悩まれた時期があったとしても、全てが過ぎ去る時には美しく見えるものです。
しかし、専門家は引き止め策の甘い罠に注意を促します。
いくら相手が給与を引き上げを提案しようが、有給休暇を追加しようが、福利厚生を充実しようが、そもそもこうした甘言が辞職を申し出た時のタイミングで飛び出した点が問題です。なぜ、あなたが退職を決断する前にできなかったのか。
まるで、別れ話を切り出した相手に「もう浮気はしないから!」と言いくるめられる展開ですよね?
本当にあなたを大事に思っているならば、昇給なり福利厚生の充実など、もっと前に実行に移していたはずです。
何より、あなたに代案を提示して時間稼ぎをしている可能性も拭えません。つまり、あなたを引き止めている間に、別の候補を探すという手段に出てもおかしくないのです。会社は人権団体ではなく、コストと利益を重視しなければいけませんものね。同時に、一度退職を決めたあなたへの信頼を会社側が維持できるのか不透明です。もしあなたが生半可に会社を試すつもりで辞職をちらつかせる気なら、即刻やめるべきです。
…..なんて、こんな労働者サイドに立った強気な意見が出て来るなんて、いかに米国の労働市場が売り手市場かが伺えるというものです。米4月雇用統計で非農業部門就労者数(NFP)が鈍化したとはいえ労働市場の逼迫の影響と考えられ、米3月求人数は過去最高を更新していました。
求人数は過去最高でも、新規採用者数との乖離は継続。
個人的には1〜3月期実質GDP成長率・速報値で個人消費だけでなく、企業の設備投資にあたる機器投資の鈍化が気掛かりで、税制改革法案成立と歳出引き上げ予算に効果を疑問視しているところですが、現時点でアメリカ人の強気ぶりは変わらないようです。
(カバー写真:Amtec Staffing/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年5月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。