株が波乱含みのなか米長期金利やドル円がしっかりな理由

ここにきて米国株式市場は調整色を強め、値動きも大きくなり、波乱含みの様相を強めている。米長期金利の動向や中国の株価指数の動向、米中の貿易摩擦の行方なども懸念材料となっている。

チャート上からは特にナスダック指数などをみるとゴルディロックス(適温)相場といわれた相場が変調をきたしているようにみえる。ただし、これで大きな上昇相場がピークアウトしたのか、それとも一時的な調整なのかは判断しづらい。

これを確認するためには、11月6日の米国の中間選挙、さらにブエノスアイレスで11月30日~12月1日に開かれるG20会合の動向などもひとつの焦点となろう。

11月6日の米国の中間選挙も、その結果は蓋を開けるまではわからない。与党共和党が優位かとも伝えられているが、トランプ大統領の支持率がここにきて低下するなどしている。

株式市場にとっては共和党が結果として勝利したほうが、好材料と捉えるのではなかろうか。そうとなれば、トランプ政権はあらためて中国との関係改善を図る可能性も多少ながらありうるか。11月のG20で米中首脳会談が開催されるのかどうかも試金石となる。

このようなイベントリスクを控えて、東京株式市場を含めて世界的な株式市場は調整局面を向かえているのだが、外為市場では円に関してみるとリスク回避による円買いとはそれほどなっていない。

ドル円は10月3日につけた114円台半ばから10月26日には111円台半ばあたりに確かに下落したものの、そこから切り返して113円台を回復してきた。

この背景としては米長期金利の底堅さがある。米10年債利回り(長期金利)は、10月5日に3.2%台に乗せたあと26日に3.07%あたりまで低下した。これは確かにリスク回避による米国債への買いが要因であろうが、3%台は維持していた。その後、再び3.1%台に戻している。この背景にはFRBの利上げ継続姿勢等もあろうが、その根拠ともなる米国経済の拡大傾向が維持されているとの見方もできる。

日本の長期金利はほぼ0.1%あたりに抑えられている手前、日米の長期金利差は米長期金利の動向次第となる。米長期金利が3%台を維持している以上、この金利差は大きくは縮まらず、金利差という面からはドル円が底堅い動きとなることになる。

外国為替市場は金利差だけで動くわけではない。しかし、米長期金利とドル円の動きをみると、それほどリスク回避の動きとはなっていないことがわかる。もしこの動きが継続するのであれば、今回の米国市場を主体とした株価の下落は一時的な調整とみることもできるのだが。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年11月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。