メキシコと米国の3200 キロある国境に壁を建設することを主張して、その為の予算として60億ドル(6600億円)を要求しているトランプ大統領と壁の建設に反対する民主党の対立によって連邦政府機関の一部が予算切れで閉鎖している。
しかし、クリントン元大統領の政権時の1994年から壁の建設が始まり、既に1100キロの壁は存在しているということは余り報道されない。それはカリフォルニア、アリゾナそしてニューメキシコとメキシコとの間の国境を跨ぐものである。トランプは残りのテキサス州に壁の建設をしようというのが現在の計画だ。
Reportaje | El otro muro que se levanta sobre México es el de la desconfianza. Mientras que Trump apuesta por endurecer cada vez más su política migratoria, en el lado mexicano miles de personas aguardan con la esperanza de cruzar a EE UU https://t.co/p0dEyzLf3q
— EL PAÍS (@el_pais) 2019年1月9日
壁が建設されるようになってからこれまで11000人が越境しようとして死亡しているという。最近だと2016年は398人、2017年は412人が国境に沿って亡くなっている。昨年は2月の時点で既に18人が死亡している。
また、国境に沿って越境しようとして警備隊に逮捕された人の数は2016年が611,689人、2017年は米国側で警備を強化した影響もあって341,084人と大幅に減少した。長い国境で地域によっては日中50度まで気温が上昇し、夜は急激に冷えるということから越境は肉体的にも厳しい(参照:elmundo.es、elpais.com)。
しかし、壁を建設したからといって犯罪の防止にはならない。例えば、麻薬組織は地下にトンネルを掘って越境するからである。その先駆者はシナロアのエル・チャポだ。
壁の建設についてのトランプと民主党の対立している状況を垣間見ることもなく、中米ホンジュラスでは1月に入って第四陣の移民集団「キャラバン」がソーシャルネットを通して編成された。500人余りが米国に向けて4000キロ余りをひと月半をかけての移動に出発した。集団で移動すればより安全だという意識が移民する人たちの間で存在している。
2018年10月の第一陣の7000-8000人の中の2000人余りは米国との国境都市ティフアナの周辺に滞留しており、米国への入国3000人余りが消息を絶ったとされていてその行き先は不明のままとなっている。
第一陣の移民の2000人余りは米国との国境都市ティフアナの周辺に滞留して米国への入国申請の審査の順番待ちの間、法外に低い賃金で働いている者もいる。それでも、15%の移民は最終的に米国へ入国できるようになるというこれまでの統計を頼りに彼らは辛抱強く待機している。入国できない場合は現地で職場を見つけて留まる。しかし、帰国することは大半の移民は望んでいないという。帰国しても働く場所はなく、空腹と暴力組織が蔓延っていつ殺害されるか分からない状況に再び追い込まれたくないからである。
また消息を絶ったとされている3000人余りの行き先は不明のままとなっている。しかし、この3000人という移民者数も確かな統計ではない。第一陣からこれまで13人が死亡したというのは明らかにされている(参照:elperiodico.com、elmundo.es)。
ソーシャルネットで第四陣の移民者を募るのに「避難所を探そう。ホンジュラスでは殺される」というキャッチフレーズが選ばれた。ホンジュラスで生活することは空腹と殺害されることを受け入れることになるからである。若者が中心になった凶暴な犯罪組織による盗難、ゆすり、誘拐などは日常茶飯事の出来事だ。
クラウディア・エルナンデス(29)さんは彼女の兄は警察官だったが、暴力組織に殺害された。それを警察に訴えようとすれば同じように殺害すると脅されたそうだ。
ホセ・スアソ(55)さんは米国に20年在住した後、帰国して衣類のビジネスを始めたが暴力組織にビジネスはつぶされ、メキシコで働こうと思ったが余りに低賃金なのでまた米国への入国を試みているという。
このような集団移民でなくとも、中米からおよそ毎年20万人が米国に入国しようと試みるそうだ(参照:elpais.com)。
ホンジュラスでは67%の住民が働きたくても職場が見つからない状態が続いているという。ほんの一部の富裕層だけが富の恩恵を受けているだけである。
ホンジュラスの企業経営連盟に以前所属していたメンバーが「ホンジュラスでは外国からの投資が不足して職場がない」と指摘している。それも当然である。ホンジュラスは地政学的に魅力はなく、暴力組織が蔓延っている。そのような国に外国からわざわざ投資しようとする企業は皆無であろう(参照:hispantv.com)。
トランプ大統領はホンジュラスからまたキャラバンが米国に向けて出発したというニュースに敏感に反応して「新しく大人数のキャラバンがホンジュラスから米国の南部国境に向かっている。ナンシー(ペロシー下院議長)とチャック(シューマー上院民主党リーダー)に言ってやれ、『ドゥローンをその周辺に飛ばしたところで彼らは止めることはできない』『唯一、壁だけ、またはスティールの障壁だけが我が国を守ってくれる。もういい加減にして、政府(機関)の閉鎖をやめろ』」と早速ツイートした(参照:mundohispanico.com)。
と同時に、メキシコとの国境に新たに5800人の軍隊の派遣を指示し、12月15日まで派遣されていた2300人の部隊は1月末まで滞留を延長させた(参照:hispantv.com)。