87歳に自家用車は必要か

池田 信夫

池袋の暴走事故については、まだ87歳の加害者の話が出てこないので一般化はできないが、高齢者の交通事故が多いことは事実だ。警察庁の調べによると、80歳以上の高齢者による死亡事故は免許人口10万人あたり11.1件で、75歳未満の約3倍である。

そもそも87歳の老人が、自家用車を運転する必要があるのだろうか。自動車は今回の事故のように運転を誤っただけで多くの人を殺す「走る凶器」である。戦後の交通事故による死者は2018年までに累計63万人。そのほとんどは自家用車によるものだ。

少なくとも池袋では、タクシーをつかまえるのは容易だ。都市部では自家用車を保有する条件を厳格化し、年齢制限を設けるべきだ。問題は交通機関の少ない地方だが、超高齢化で地方の交通インフラが不足する時代に、これからインフラ投資を増やすわけにはいかない。これはライドシェアを進めるべきだ。

ところが日本では、タクシー業界の反対でライドシェアが解禁されない。「安全性が確保できない」というのがタクシー業界の言い分だが、そのおかげで今回のような事故が起こる。この問題は自動車メーカーもからんでいるので容易ではないが、自家用車のコストが減ると可処分所得は増える。ライドシェアで多くの命を救えることは疑いない。