日韓条約否定なら日本財産返還と永住権否定が可能

八幡 和郎

文在寅大統領がやっていることは、日韓国交回復に際して結ばれた基本条約や請求権協定を実質的に否定し、反故にするものといわざるをえない。

あのときは韓国は貧しかったから、それに乗じて、不利な条件を飲まされたとかいうような論理で、それにまた、理解を示す愚かな日本人もいる。「韓国は敵なのか」とかいう愚鈍な署名運動をしている78人の“いつもの面子”などがそうだ。私のFacebookでも彼らの名前をよく覚えておこうと書いたら、ものすごい数のシェアがされている。ありがたく実用的なリストになって便利だ。

1965年の日韓基本条約調印(ハンギョレ新聞より引用)

別に日韓基本条約を結ばないと餓死者が続出といった状況だったわけでもなく、国際法的にも外交的にも恥ずかしいことをよくいうとしかいいようがない。

さらに、あのとき、仕方なく妥協したというなら日本のほうこそ、しなくてよい妥協をして韓国側に大甘の条件を認めたのである。

たとえば、日本は韓国に現在の貨幣価値で何十兆円もの投資をして、素晴らしい交通インフラや学校や産業設備を残した。日本の個人や企業が向こうに残した財産や請求権も膨大だ。条約締結時点の在住者の個人財産は認めたが、日本人は追い出され、韓国人は日本政府からの退去要求にもかかわらず居座り、逆に済州島などから膨大な戦後の密航者が流入していたから、一方的なものだ。

ともかく、国際的な常識に従えば、日本が失ったものが多いのだから、日本のほうが支払いを受けるべきものだし、向こうが日本人を追放したなら、こちらも追放できるのが当たり前だ。

しかし、日本は大甘だった。日本からの請求も放棄してしまった。しかも、趣旨不明の経済協力までした上に、2世までとはいえ特別永住権も認めた。

椎名悦三郎(Wikipedia:編集部)

そして、実は外務省の反対を押し切ってこういう大甘の親韓的な方向に舵を切ったのは、岸信介時代であり、最後に交渉をまとめたのは、岸信介の一の子分だった椎名悦三郎外相だった。

日米安保体制を確固とするために、韓国と早く国交を樹立してくれというアメリカの要請に弱かったのと、山口県の漁民が李承晩ラインで拿捕されていたからということもあったようだ。

もし、日韓条約の基本からひっくりかえそうというなら大いに結構。官民の日本の財産を回復させてもらおうではないか。特別永住権は日本の国内法で3世以降も認めているが条約上の約束は2世までだけだから法律改正でいかようにもできる。

北朝鮮にも韓国に出した経済協力相当のものを払うような約束になっているが、韓国とチャラにするなら、北朝鮮のほうから鴨緑江のダムとかいろいろ買い取ってもらおう。日本人が普及させたからといってハングルもおやめになったらいい。朝鮮の伝統文化の価値をみいだし文化財を復興したのも日本人ではないか。

韓国大統領府Facebookより:編集部

文大統領が、経済協力の金は利子つけて返そう、日本人財産の補償もする、在日日本人も引き取ると仰るなら、何もお断りする必要もあるまい。

もちろん、上記のような事態を私が望んでいるのではない。しかし、日韓条約体制を否定するというのはそういうことだと、まずは、日本人が理論武装し国民的な共通認識としないと歴史戦争にも外交戦争にも負けるということはたしかだ。

やれるものならやってみろ、と構えておればいいのである。