日本初、医療的ケア児専門のシッター事業 「医療的ケアシッター ナンシー」始めます!

産科医療技術の発達によって、日本は世界で一番出産時に子どもが亡くならない国になりました。

一方で医療的デバイスとともに生きる「医療的ケア児」は急速に増えていて、例えば人工呼吸器の子ども達は10年前の2倍に。

にも関わらず、保育園でも幼稚園でも障害児の通所施設でも十分な受け入れができず、医ケア児親子が孤立している状況でした。

医ケア児保育園の設立

そうした状況を打破するため、2014年9月に「障害児保育園ヘレン」、15年4月に「障害児訪問保育アニー」をローンチ。

累計100人以上の医ケア児達のお預かりをしてきました。

ヘレンやアニーにお子さんを預けているほとんどの保護者の方は働き続けられ、医ケア児がいる=仕事辞める、という時代は、少なくとも東京23区においては変えられたと思っています。

これまでの取組では助けられない、たくさんの親子たちが

が、しかし。

ヘレン・アニーを卒園していった子達、その親達はその後、どうなるか。

都内の特別支援学校では相変わらず「親同伴」を求められ、仕事を理由に断ると、訪問教育に。

訪問教育は先生が家に来てくれて助かるけれど、1回2時間の授業が週3回だけ。義務教育なのに、全く授業時間が足りません。

親同伴はしなくて済み、特別支援学校に通えた場合も、学童(放課後デイ)は医ケア児お断りのところが多いので、結局フルタイム就労は諦めざるを得なくなります。

また、そもそも働かずに医ケア児を育てている親(9割母親)は、24時間365日、医ケア児の介護に人生を費やすわけです。人工呼吸器を外してしまう子も結構いて、抜けたら1分で亡くなってしまうので、1分たりとも目を離せないのです。

こうした親子たちには、悔しいことに何もしてあげられなかったのです。

医療的ケア児専門のベビーシッターというアイデア

そこでふと思ったのです。

「医療的ケア児のための、ベビーシッターをやったらどうかな?」

そうすれば、24時間365日医ケア児を介護しているママに、レスパイト(一時休息)の機会を提供できる。

また、学校に迎えに行って、家でみてあげれば、学童保育部分をカバーできる。

2時間×週3の訪問教育の足りない部分を、家庭教師的に補ってあげられる。

良いじゃん、良いじゃん、と。

でも、普通にやったら、経済的に成り立たなさそうだし、1分目を離したら亡くなっちゃう可能性もあり、リスクもむちゃくちゃ高い。

普通に考えたら、無理でしょ、と

けれど、その時、日本で初めて「病児専門のベビーシッター」を始めた15年前の風景が蘇りました。

「絶対無理」

「リスクが高すぎる」

色んな人達にダメ出しされまくって、それでも諦めずに立ち上げた訪問型病児保育。

今では7000人を超える会員で、日本最大規模の病児保育サービスになりました。

だったら今度もできるはず。

社内の医ケア児を誰よりも愛するメンバーと試行錯誤を重ねました。

「みんな」の力を借りて立ち上がった

訪問看護、居宅訪問型児童発達支援事業、居宅介護、移動支援など、違う法律の違う制度をとにかく組み合わせて、3〜4時間のお預かりを実現できることになりました。

しかも、公的な制度の組み合わせなので、経済的負担は非常に小さいです。

(世帯年収500万円の家庭が週2回、毎週利用しても、月4600円の負担(交通費は別途)で済みます)

名付けて「医療的ケアシッター ナンシー」。ナンシーの名前は、発達障害児だったエジソンの可能性を信じ、花開かせたナンシー・エジソンから取っています。

そんなこんなで何とか運営はできそう。でも初期投資はどうしよう。最初はどうしても赤字を掘らないといけない。

そんな時に、初期資金を寄付してくれる方々が現れました。

みんなのスーパー、西友さん。

村上財団さん。

稀代のベンチャーキャピタリスト、佐俣アンリさん。

ラクスルCEOの松本恭攝さん。

企業、財団、投資家、起業家という多様なバックグラウンドを持つ方々が、ともに一つの社会事業を創ろう、と同じ船に乗ってくれたのでした。

みなさんにお願い

9月1日から事業をスタートさせていきますが、

この「医療的ケアシッター ナンシー」サイトを拡散して頂けたら嬉しいです。

特に、医療的ケア児を支えたい、という志ある看護師さんを募集していて、そういう方々が来てくれるか、が事業の鍵なのです。

皆さんと共に、医療的ケア児とその親が、あたりまえのように笑って暮らし、学び、働ける社会を目指して。

無謀とも言える挑戦を、応援して頂けたら嬉しいです。


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2019年8月1日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。