こんなに違う!国、都、市の答弁調整。一般質問の話

数日前、元都議会議員、現参議院議員の音喜多氏が、議会における一般質問について、「都議会と国会の違い」という趣旨の記事を公開しました。

私としては、比較政治学的に(というか、議会運営の実務レベルの比較として)とても参考になる記事でした。

どんな仕事でもそうですが、中に入ってしまうと当たり前のことでも、外からはまったく見えないことが多くあります。

そこで今回は、音喜多氏の記事にならって「佐倉市議会の質問・答弁調整」を、音喜多氏よりはちょっとだけ詳細に、事務手順も含め書いてみたいと思います。

筆者作

できれば、他市の市町村議会について状況を知りたいところですが、まずは私が先陣を切って、全国月間1,000万PVのアゴラ読者に、広くわが佐倉市議会の状況を公開したいと思います。

佐倉市議会の一般質問における「質問・答弁調整」

1. 課題に関するヒアリング

議員個人が、「むむっ」と思うポイントを、市役所の担当部、もしくは課(以下「担当課」とする)にヒアリングします。その時点では、その点を一般質問とするかどうかは決めていません。通常電話での確認ですみますが、必要に応じてアポイントをとる場合もあります。私の場合、議会側の部屋(私の場合無会派議員用に用意された部屋)に来てもらうのは先方の移動時間が無駄になってしまうので、担当課まで足を運ぶようにしています。

また、この「むむっ」というポイントは、もちろん日常的に発生しますが、毎度毎度議員が担当課に足を運んでいたら先方も仕事になりません。そこで、Webなどでできる限り下調べをしたうえで、どうしても確認しておきたいことに的を絞って、10分以内で確認できるよう質問をまとめておきます。そのため、担当課の受付で、立ち話で終了する場合がほとんどです。

2. 議会質問のタイトル提出

「1.」などで日常的に情報収集をしていると、年に4回ある定例会までにそれなりに内容がたまっています。

そんな内容をにらみながら、定例会の招集日の1週間前までに質問のタイトルを決めて市役所側に提出します。私は、タイトルができたら極力早めに提出するよう心掛けています。とはいえ、ルール上提出したら内容を変えることはできませんので、提出は締め日前日とか、当日になってしまう場合もあります。

3. 答弁調整

音喜多氏が記事に書いているのはこの部分からです。

「2.」で議会質問のタイトルを提出した後、市役所では質問を内容ごとに担当課に振り分けます。議員の質問通告を受け取った担当課としては「来てしまったか(つらい)」と思っていることでしょう。これは、本当に申し訳ないと感じる部分です。

熱心な市民の方々からすれば、「そんな甘いことを言ってどうする!」とお怒りになるかと思いますが、議員とすればそんなに単純な話でもないのです。

ちょっと考えてみてほしいのですが、市役所職員の給料も、市税から出ています。また、市役所の仕事は、ざっくり言えば市民へのサービスに係るものばかりです。

一方、議会で行われる一般質問というのは、質問される側の担当課からすれば準備に相当に時間を割かれるため、本来すべき「市民のための」仕事の優先順位をいったん下げて、質問に備える必要があるのです。

そこで、議員が自分のパフォーマンスや「あまり意味ないこと」のために議会での一般質問を使った場合、「単なる時間の無駄」であることも、往々にしてあるわけです。

他県に住む大学の同窓(県職員)から聞いた話ですが、県議会議員が担当課に来て「〇〇について一般質問したいのだけど、何かある?」と言ったとか。心の中で「死んでくれ」と思ったそうです。同感です。

話を元に戻します。

議員がタイトルを提出した後の質問・答弁調整は、担当課は議員の部屋に来て行う、という方向でアポイント調整します。

私としては、具体的な話をするのに、先方の資料が手近にある担当課の会議室のほうが効率的であるという理由を伝えて「そちらでどうですか?」と確認するのですが、結果は半々というところです。質問・答弁調整する場所は、佐倉市の場合特に決まっていないようです。

市役所側が調整にかける人数については、大勢の場合もあれば、2人である場合もあります。人数が少ないケースは、事前にあらかた内容やすり合わせができている場合です。大勢の場合は、質問の内容が複数の部課にまたがるケースが多いです。

質問内容にもよりますが、私の場合調整の際は、最低限「こんな内容の質問を、こんな流れで実施します」という文書と、質問のポイントを渡すようにしています。そこでのやりとりを通じて、内容の微調整をしていきます。

このタイミングで議員側の質問方針がある程度詰められていないと、ただダラダラ長いミーティングになるようです。質問する議員の務めとして、それはしてはいけないことと考えています。

佐倉市議会の場合、調整は通常この1回のみ。その後、議員が原稿の詳細を詰めながら、必要に応じて電話確認をしますが、私の場合調整のミーティングのみで原稿を作ってしまうこともあります。

4. 原稿提出

できあがった原稿は、担当課にメールで入稿します。

過去2回あった私の一般質問は、内容が持ち時間の30分を超えてしまったため、用意した原稿すべてを読むことができませんでした。

そんなわけで、私が用意した原稿を、私のブログで全文公開しているわけですが、基本的に一般質問の場で私が発言する内容のすべては「原稿」という形で担当課に事前通知されています。

一方、質問に対する答弁内容は、担当課から事前に聞かされることはあまり多くありません。担当課から情報提供があったとしても、口頭で「ざっくりこのくらいの数字です」とか「〇〇といった方向で答弁する予定です」程度の内容でした。そのため、議会当日の一般質問で「議員質問→担当課答弁」の後の議員の発言は、ぶっつけ本番原稿ナシ、というケースが多くあります。瞬発力が問われる状況ですね。

ツワモノは、更問いと言って、先方の答弁で納得いかない場合、更に深堀りする問いを投げることもあるようですが、下手な人がやるとトンチンカンな質問になったりして、恥ずかしい思いをしつつ持ち時間が減る→良いことなし、という状況に陥るので注意が必要です。

以上について、音喜多氏の項目にあわせてにまとめると、以下のとおりになります。

【佐倉市議会】

  • 質問・答弁調整における担当者の人数は、状況に応じてマチマチ
  • 議員が作成する質問内容は、質問・答弁調整の後、完成原稿を担当課に提出
  • 答弁内容は、議員に事前に情報提供される場合もあるが、ざっくりした情報のみ

ということで、私が感じる佐倉市議会の質問・答弁調整は、どちらかと言うと「国会」に近い、という印象です。ただし、「質問原稿」は、議員から市に対して提出しているという状況をみると、そこだけは都議会に近いのかもしれません。

以上は、佐倉市議会における一般質問の事務の流れです。

念のためお伝えしておくと、これは佐倉市における、就任半年の無会派議員(私)の体験に基づいています。そのため、もしかしたら大きな会派に所属している議員はまったく違う扱いを受けているのかもしれないし、私と同じかもしれない。そのあたりはお含みいただいたうえでお読みいただけると助かります。

高橋 富人
千葉県佐倉市議会議員。佐倉市生まれ、佐倉市育ち。國學院大學法学部卒。リクルート「じゃらん事業部」にて広告業務に携わり、後に経済産業省の外郭団体である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)で広報を担当。2018年9月末、退職。出版を主業種とする任意団体「欅通信舎」代表。著書に「地方議会議員の選び方」などがある。