新型コロナ:今が正念場???危機的な国の対応

中村 祐輔

四川省でコロナウイルス感染症から回復し、一旦退院した人が、10日後に再びウイルス感染で入院したと報道されていた。テレビのコメンテーターが「短期間で二度感染することはない。まだ、完全に治りきっていなかっただけだ」と断言していた。

果たしてそうだろうか?これだけ広がっているのだから、性質の変わったウイルスが出てきてもおかしくない。危機管理の観点からは、慎重な判断が必要だ。もう、この話題には触れたくないと思ったが、やはり、なんだかおかしい。

編集部撮影

特に、国としての対応ができていないと思ったのは、厚生労働省の職員が、感染者と接触していたにもかかわらず、感染が明らかになるまで勤務を続けていた点について、「ガイドラインにしたがっていたので、問題ない」と答えていたことは危機的だと感じた。これぞ、悪しき前例主義だ。

これまでのルールにしたがって行動していれば責任を問われることがないという官僚型の仕組みだ。新型コロナウイルスの感染力はこれまでになく高く、感染が広がる様式も確かではない。現実を見て、分析し、最悪を想定した対応が必要だがそれができていない。感染者が出た学校ごとに対応が異なっているのも無責任な話だ。

間違ったエビデンス主義、ガイドライン主義が、今広がっている事実(エビデンス)に対する判断力を失わせているのだ。朝のワイドショーで検査体制の不備を指摘していた人がいたが、この点に関しては、どう考えても遅すぎるのだ。

先ほども、文部科学省が6大学に資金を投入して検査薬の開発を急ぐと言っていたが、こんなものは企業に補助金を出した方がよほど実用的だ。どうして検査システムの開発にいろいろな研究機関が個別で対応するのか理解不能だ。検査キットはあるのだから、どのようにして量を拡大すればいいのかを当面は考えるべきなのだ。

これから1-2週間前が正念場だというが、1-2週間前に正念場は来ていたのではないのか?経済活動への影響が懸念されることはわかるが、ボヤで済めば、全焼は免れるが、広がれば、延焼も起こり、被害は桁違いに拡大する。判断・対応の遅れは、損害を拡大するだけなのは歴史が証明している。

発熱や咳のある人は自粛ではなく、行動制限するくらいの大胆な施策が必要ではないのか?桜もわかるが、この国難に際して、与野党が協力して対応すべきだ。今の野党が与党の時に行ったことに対する反省があるなら、今すべきことは、言葉尻を捉えることではないはずだ。

このままでは、日本に滞在した人、日本人は、海外から締め出されてしまう。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年2月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。