医療法人社団ペルル理事長の駒崎です。
新型コロナウィルス(COVID-19)が日本でも広がりを見せている中、各社が人混みを避け、積極的なリモートワークを実施し始めています。
また、各種イベントも中止・開催延期となり、代わりにオンラインでの実施が行われている事例も出始めました。
安倍総理もリモートワークを推奨し、一気に全国でリモートワーク・テレワークが普及しそうな勢いになっています。
しかし、そこに取り残されている業界があります。最もリスクが高いにも関わらず。
新型コロナ患者の方々が通院することで起きること
それが病院・クリニックです。
新型コロナウィルスに感染した患者さんは、熱が出てだるくなるので、「あ、風邪かな」と思って、かかりつけのクリニックに行くでしょう。
クリニックは症状を聞きますが、現在は新型コロナかどうか分かる検査はクリニックレベルではできませんので、「安静にしていてください」と一般的な風邪薬の処方箋を出しながら、伝えるしかありません。
それまでに新型コロナ感染した患者さんは、わざわざ家からクリニック、クリニックから家に、と移動をし、無意識のうちに感染を広げてしまうのです。
また、医療者も感染するリスクが高まります。医療者が感染した場合、その医療機関は機能を停止し、医療を必要とする病人の方々は大きな困難を抱えることになります。
これは社会にとっても、大きなリスクです。
オンライン診療の可能性
こうした状況を防ぐために、通院をオンライン診療に変えれば良いのです。
自分の家からスマホやPCなどでアクセスし、自宅から最寄りの薬局で薬を受け取る、もしくは配達してもらう。
オンライン診療であれば、無用な感染拡大を減らせますし、医療者への感染リスクも下げられます。医療機関の機能停止の確率も下げられるわけです。
しかし、今はそれができません。なぜか。
「初診は対面診療」の原則があるからです。
対面診療の壁
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(通称:オンライン診療ガイドライン)には以下のようにあります。
医師-患者間の関係において、診療に当たり、医師が患者から必要な情報の提供を求めたり、患者が医師の治療方針へ合意したりする際には、相互の信頼が必要となる。
このため、日頃より直接の対面診療を重ねている等、オンライン診療は医師と患者に直接的な関係が既に存在する場合に限って利用されることが基本であり、原則として初診は対面診療
つまり、医師と患者は信頼関係が必要だから、オンラインじゃダメよ、と。
いや、別に対面だから信頼できるわけでもないし、オンラインmtgだから信頼できないっていうわけじゃないでしょ、と思うわけなのですが。
我が社はオンラインmtgフル活用してますが、それで信頼損ねたりしませんし、なんなら初めましての記者さんとオンライン取材受けたりしていますが、しっかり記事にしてもらえてるのですが…。
まあ、そんな理由でオンライン診療は原則「まずは会ってから」になっていて、その後再診でオンライン診療できる疾患もかなり限定されています。
(禁煙診療やアフターピル等は、例外的に初診からオンラインOKですが、逆に言うとそれくらいしか認められていません)
ここまで読まれた方にはお分かりのとおり、これって、今回の新型コロナのようなパンデミックが、全然想定されていないんですよね。
有事の際に対応できるよう、平時からオンライン診療できるように
新型コロナウィルスは報道では非常に騒がれていますが、不幸中の幸いにも、そこまで致死率が高くなく、そのうちインフルエンザ的な存在になっていくのだと思います。
しかし、これが致死率が高いウィルスだったらどうなのでしょうか。まさに社会全体でパニックとなり、多くの人々の命が犠牲となるでしょう。
そうした時に、いきなり「じゃあオンライン診療に切り替えましょう」と言っても、できるわけがないわけです。
平時のうちにオンライン診療をできるようにさせておいて、有事を迎え撃つ、と言うことをしなければ、本当に人の命が失われる事態になってしまいます。
今は厚生労働省は目の前の事態処理でてんやわんやかと思いますが、一息ついたら是非オンライン診療の解禁を全力で行って頂きたいと思います。
社会全体で感染を広げない仕組み。そして治療の核となる医療機関を機能停止に追い込まない仕組みを、必ず来るだろう新しいウィルス発生の前に、しっかりと整えておくことの必要性こそ、今回の新型コロナ騒動で我々が学んだことなのではないでしょうか。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2020年2月24日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。