デジタル活用教育にアクセシビリティ対応を④

新型肺炎の今こそ遠隔教育を充実させよと原英史さん・吉井勇さんたちが提言している。傾聴に値する提言だが、アクセシビリティ対応への言及が抜け落ちている。

博物館・美術館・動物園・水族館などの施設は、科学や芸術に関する様々な知識を子供たちに提供する重要な公共機関である。今では、それらの機関が提供するサイトから情報を入手することもできる。実際、休校期間に動物たちの癒し映像を提供した動物園は話題になっている。

障害児をはじめ多様な子供たちが利用するので、これらのサイトではウェブアクセシビリティ対応が不可欠である。それでは、上野恩賜公園にある施設の公式サイトはウェブアクセシビリティ方針を掲載しているだろうか、調べてみた。結果は次のとおり。

ウェブアクセシビリティ方針を掲載していない施設:東京国立博物館国立科学博物館国立西洋美術館東京芸術大学大学美術館恩賜上野動物園下町風俗資料館旧東京音楽学校奏楽堂日本芸術院日本学士院上野の森美術館

ウェブアクセシビリティJISのレベルAAに準拠と表明している施設:東京都美術館東京文化会館

このように、大半の施設はウェブアクセシビリティ方針を掲載していない。総務省「みんなの公共サイト運用ガイドライン」はまるで無視されていたのである。なお、国立科学博物館と上野の森美術館には、車いすでの見学などに関するバイアフリー情報は掲載されていた。

それでは、具体的にはどのような問題があるか、ガイドラインと同時に総務省が提供したアクセシビリティチェックツールmiCheckerを用いて検証した。

東京国立博物館のトップページでは音声読み上げに対して「問題あり」が28か所。その大半は画像にテキストによる説明(代替テキスト)が付いていないというもの。国立科学博物館は弱視への対応(ロービジョン)について、固定サイズのフォントが使われているなど「問題あり」100か所。国立西洋美術館でも文字色と背景色のコントラストが不足などロービジョンの「問題あり」10か所などという結果になった。また、東京国立博物館と国立西洋美術館についてはiframeを用いて外部コンテンツが埋め込まれていると指摘されたが、これでは読み上げとの相性が悪い。

国立科学博物館の診断結果(一部)

10人に1人以上の子どもが何らかの障害をもっている。新型肺炎の影響で通常の学びが中断した今、そんな子どもたちが芸術や科学について学ぶ機会が、アクセシビリティの不備で阻害されるのは気の毒だ。

子どもの学びに関係する公共機関には、ウェブアクセシビリティ対応を急いでいただきたい。また、原さん・吉井さんたちの提言はこの点について言及して欲しい。