永田町・霞が関と国民はなぜ遠いのか

千正 康裕

国会議員の先生方に現場の声が届いて、国会運営も緊急事態対応を始めました。

そのことについて書きました。

緊急対応に切り替えた国会議員に感謝を

そうです。ちゃんと現場の声は国会に届くのです。

もちろん、僕の動きが国会の決定を後押しできた要素など本当に微々たるもので、たくさんの方が動いてくれた結果です。

永田町にも霞が関にも仲間がたくさんいるので、これは自信を持って言えますが、思っているよりずっと国会議員も官僚もそれぞれの立場で前に進めようとしています。立場やスタンスが違うだけで与党も野党もです。中々、見えないのが課題ですが。

政策がうまくいかない原因の80%くらいは、人の話を聞けていないか、知恵がないか、動かす力がないかです。

一般の方へ

一般の方にお伝えしたいことがあります。

一般の方から見ると、永田町や霞が関はとても遠い世界に見えるかもしれません。でも、特に国会議員の先生方は、一般の方が何を考えているのか、どういう意見を持っているのかということを、ものすごく気にしています

官僚時代の僕自身もそうでした。

だから、国会議員の人たちが、一般の人のことを気にしているのに、それが伝わらずに、一般の人から「国の方針て、偉い人が勝手に決めていて、自分たちには関係ない。」と見えてしまうことが多いということに、いつも悲しい気持ちになっていました。

その状況では、よい政策をつくることができないからです。

今の状況は「国会議員の国民への片想い」です。

生活の困りごとや国の方針に意見があれば、どんどんツイートするなり、拡散するなり、直接議員に声を届けるなりしていただければ、この国の政策はもっともっとよくなります。

国会議員のみなさんへ

自分を開示して、仕事をするのはとても大変ですし、24時間365日公人であることは、とても大変だと思います。

常に批判にさらされますし、相当な覚悟がないと国会議員なんてできないですよね。歳費が高い(国会議員の給料が高い)と言われたりもしますが、経費もすごくかかるので、決して経済的においしい仕事ではないと思います。経営者として名を馳せた人、国会議員になってもすぐ辞めてますよね。

もっと、国会議員のこともフラットに知られるようになったらよいと思います。

一つだけお願いです。

事務所全体として、一般の方の問合せになるべく優しく対応していただければ幸いです。(この記事とても面白いです↓)

実際に国会議員の事務所に電話して問い合わせしました

官僚のみなさんへ

だまされたと思ってツイッターをやってみてください。

スマホでアプリをダウンロードすれば、2分で簡単に使えます。
匿名でOKです。発信も必要ありません。見るだけでよいです。

官僚の仕事で普段会う人は政策のプロばかりですよね。
国会議員、官僚、地方の官僚、マスコミの人、関係団体・業界の人、有識者…。

プロの中での議論は大事ですが、今はそれだけでは国民の納得する政策が作れません。審議会に出てくるような人が代表していない国民がずいぶんと増えました。政治学的にいうと「組織化されない有権者」というやつです。

この人たちからすると、ものすごく国の政策が遠くなっています。自分たちの意見が政策に届いているとはとても思えないでしょう。政治不信や低い投票率の背景にもなっています。選挙に行きましょうなんて若い人にいくら言っても、これでは投票に行こうなんていう気持ちになりません。

官僚の皆さんが日常付き合っている、記者クラブに常駐記者を出しているような大手メディアも、現場の記者は本当に大切なことを書こうとがんばっていますが、社内の力学に常に悩んでいます。

広告収入も落ち、経営も厳しくなっているので、転職も増えているようです。女性記者比率が増えている中、彼女たちの生活と記者の仕事をどうバランスをとるかという難しい問題もあります。メディアの中の世代間ギャップも大きいでしょう。

政策の発信者と国民の間をつなぐ機能が果たせなくなって久しいですね。会社としては、うんと小さいけど、ネットメディアの方が好きな記事を書けますし自由ですね。大手メディアの記者がネットメディアに転職していくという流れは、どんどん強くなっていくでしょう。

ただ、大手メディアは、まだ力を持っています。
それは、「偉い人」が読んでいるので「偉い人」への影響力が大きいということです。

だから、とても大事です。
でも、それがすべてではないということなんです。
むしろ、カバーできない層がたくさんある中の上ずみなんです。

ここ数年、政策に納得できない国民の声がSNSで表に出るようになってきましたね。いわゆる炎上というやつです。

炎上によって、一度決めた政策を発表した後に方針転換せざるを得なくなるという、かつての霞が関ではありえなかったケースが最近増えてきています。

別に、間違えたら素直に直せばよいと思いますが、せっかく苦労して作るのだから、なるべく最初から国民に受け入れられるものを作りたいですよね。

ツイッターのアカウントを作ったら、自分の担当している政策分野の話題のキーワードを入れて検索してみてください。

普段会うことのない、政策のプロではない普通の人たちが、自分の担当している政策について、たくさんの意見を言っているのが見えます。

140文字のつぶやきだけでなく、関連するニュースやブログも見つかります。

出てくるのは、強い思いのある人の声なので批判も多いかもしれません。なぜ、批判しているのか考えてみて下さい。

もしかしたら、誤解したまま批判しているかもしれません。だとしたら、ぜひ誤解を解くように公表資料を作ったり、国会答弁を書いてみてください。

中には、筋の通った批判もあるでしょう。そういうときは、政治的に政策がくつがえる前兆です。くつがえった時に、どういう案を作ればよいかシミュレーションをしておけば政治決断が出た時にあわてずに正解を出せます。

もちろん、ツイッター=世論ではないかもしれませんが、話題になっている事柄については、おそらくほとんどのタイプの意見が出ていると思います。多くの国会議員も官邸もツイッターで交わされている意見を見て考えています。

国会議員や官邸に何か言われる前に、普通の人の意見を見に行ってみてください。ぐっと先が読めるようになると思います。
国会議員のアカウントもぜひ見てください。

明日、質問する国会議員がどういう考えの人かも分かります。意外と官僚のことを大事に思ってくれる人もいるのが分かります。

議員会館にレクに向かう間に、その議員のアカウントを見るだけでも、議員本人のことがかなり分かります。質問の背景や問題意識まで分かることもあります。

それだけでも、議員と噛み合う議論ができる可能性が上がります。無駄なけん制も減るかもしれません。もしかしたら、仲良くなれるかもしれません。

ぜひ、試してみてください。

永田町・霞が関と一般の人の距離が縮まって、妙なけん制や諦めがなくなって、本音で話すことができるようになって、みんなが納得できるような政策がつくれる、税金の使い方ができるようになる。

これが、僕の願いです。


編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2020年4月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。