世界からは日本の電波政策は理解不能

山田 肇

各国の電波政策をウォッチングしているPolicy Trackerというメディアから取材を受けた。記者が聞きたかったのは、スキャンダルで日本の電波政策は変わるだろうかということ。

その後、Policy Trackerに記事が掲載された。登録しないと閲覧できないので、ザっと内容を紹介する。

  • 記事はスキャンダルについてNo such thing as a free lunch(ただ飯はない)と紹介している。
  • 菅総理が、記者会見で独立規制機関について質問された際に、慎重に回答したことにも記事は触れている。現行のシステムは大臣が責任を持って迅速に意思決定するのに適切、と回答したと書かれている。電波オークションにはもっと慎重とされている。
  • 2019年に電波法が改正され、電波オークションの考えを一部取り入れた総合評価方式が導入されたが、改革への道のりは遠い。

記事中にある「free lunch」は英語の慣用句だが、実際には総務省官僚は高価なディナーをごちそうになったわけだ。記事には、僕の発言がかなりの長文で引用されている。要約すると次のとおり。

総務省の視野に抜本改革はない。20年前に欧州で起きた3Gオークションの価格高騰を理由にして、電波オークションは導入できないと主張し続けている。菅総理は携帯電話料金の低減を求め実現したが、これは総務省と業界との裏ネゴで決まったことで透明性はない。そうでなければ、各社の月料金が同じになるはずはない。今後、河野太郎規制改革大臣のような次世代の政治家が力を持つようになれば、改革されるだろう。

取材中に驚いたのは、総務省の周波数配分方法(いわゆる美人投票方式)をこのオーストラリア人記者が知らなかったこと。世界各国で電波オークションが導入されて20年以上がたつ。ベテラン記者であっても美人投票方式を目の当たりにしたことはないのだ。

つまり、太古の手法を取る日本の電波政策は世界からは理解不能ということだ。

僕はこう説明した。

総務省は電波業界では王様である。王様の思し召しで周波数が配分されるので、業界は頭を下げ、言うことを聞かざるを得ない。思し召しの理由は説明されない。その証拠に、周波数配分結果の報道資料には「電波法令に適合していると認められました」としか書かれていない。

王国最大の問題は、王様の言うことを聞く臣民だけが大事にされることだ。その結果、電波行政は既存業者を守る方向に偏り、新規参入が困難になる。競争不在が国民に不利益をもたらす。

総務省は世界から隔絶した行政手法はすぐに改めるべきだ。この問題を議論する第2回電波シンポジウム「電波改革の扉を開けよう」は4月20日開催です。ご視聴ください。