フルスペックの自動走行車の時代を展望して

米国連邦政府アクセス委員会は、自動走行車の概念設計に関する公開フォーラムを連続開催している。第4回は4月21日に開催された

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アクセス委員会委員のKaren Tamleyは、障害を持つ乗客の旅行オプションを拡大すると自動走行車の価値を評価し、聴覚障害、視覚障害、または認知障害のある乗客への対応の重要性を指摘した。

Carnegie MellonのAaron Steinfeldは、自動走行バスと乗客のコミュニケーションの課題について発表した。乗客、特に障害をもつ乗客とのコミュニケーションには概念設計に盛り込むべき要素が多い。Steinfeldは、車いすの乗客が乗降する際には路肩に段差がない場所を選択するというように、乗客のニーズに合わせた対応が必要になると指摘した。このためには、個々の乗客の状態を、プライバシーは守ったうえで、自動走行バスが知らなければならない。

そのほか、乗客は自動走行バスにいろいろと話しかけるだろう。「次の電車に間に合うように駅に着くかしら?」「4時45分に来てもらえる?」 これもコミュニケーションの課題である。

University of MarylandのGregg Vanderheidenは、多重障害を持つ乗客の存在も忘れてはならないと発言した。この問題はとてもむずかしい。視覚に障害がある人には音声案内という画一的な対応は、その乗客に聴覚障害もあれば通じなくなるからだ。これに備えて自動走行車に豊富なコミュニケーション機能を持たせるという解がある。一方で、その人が使えるデバイスと自動走行車との間でコミュニケーションを図るようにインタフェースを用意するという解もある。Vanderheidenは議論を続けるように求めた。

連邦通信委員会から参加したDarryl Cooperは、自動走行中に乗客に緊急情報を通知する可能性も含めて、クローズドキャプション(字幕)や音声ガイド等のユーザーインターフェイスを充実させる必要性に注意を喚起した。

World Wide Web Consortium のTed Guildは、ユーザインタフェースにはWeb技術が採用される可能性が高いので、W3Cで先行して標準化を進めるべきとした。W3CにはWebのアクセシビリティについて検討するWAIと呼ばれるグループがある。今後、WAI等で議論が始まる際には、わが国からもエキスパートを派遣するのがよい。

米国には、連邦政府が調達するICT機器・サービスでアクセシビリティ対応を義務とする、リハビリテーション法508条に基づく規制がある。それでは、自動走行車は輸送機器なのか、それともICT機器なのか。あるいは、ロボットなのだろうか。自動走行バスは公共交通サービスなのか、それともICTサービスなのか。

技術融合が進む時代を反映した活発な議論は、わが国で自動走行車を開発している人々にも参考になるだろう。なお、フルスペックの自動走行車のアクセシビリティについては、下記記事も参照ください。