日本入国時の隔離は当分なくならない

11月8日から日本入国時の規制が緩和されるという報道が出た。

入国時の待機、8日から緩和 接種済みなら最短3日

政府は5日、新型コロナウイルス禍で原則停止していた海外からの入国を緩和すると発表した。外国人の新規入国はビジネス目的や留学生、技能実習生に認める。ワクチンを接種したビジネス客は入国後の待機を最短3日に縮める。8日から適用する。(日本経済新聞11月5日付)

この記事は一部不正確で、正確には「待機期間4日目以降は、受入責任者の管理のもとに待機場所以外での活動ができる」であり、待機期間が短縮される訳ではない。

新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際対策措置(ワクチン接種証明書保持者に対する入国後・帰国後の行動制限及び外国人の新規入国制限の見直しについて)(外務省HP)

入国後14日目までの待機施設等(受入責任者が確保する待機施設又は自宅をいう。以下同じ。)での待機期間中、入国後3日目以降に改めて自主的に受けた検査(PCR検査又は抗原定量検査)の陰性の結果を厚生労働省に届け出ることにより、入国後4日目以降の残りの待機施設等での待機期間中、受入責任者の管理の下に活動計画書の記載に沿った活動(以下「特定行動」という。)を認めることとします。

日本の入国制限が緩むかどうかについて、9月にアゴラに記事を2本掲載して頂いた。この時に私が考えていた国の方針は、今回の緩和でも基本的に変わっていない。

「ワクチン接種者のみの入国時隔離免除」は科学的根拠がない(9月3日)

日本で入国後の14日間隔離を課しているのは、PCR検査だけではすり抜けられるウイルス保有者がいて、その人たちを14日間隔離しておけば、その間に発症するはずだ。発症しなければ、仮にウイルスを保有していても排出されており、他人に感染させる可能性はない、という理屈だ。特例でオリンピック関係者の隔離免除を可能にしたのも、14日間の行動を管理することで、仮にウイルス保有者であっても、接触者をトレースすることによりウイルスの拡散を防げる、という考え方からだ。

日本で更なる入国緩和策が取られるのか?(9月29日)

それに対し政府は何故入国後の隔離を免除させようとするのか。防疫のためではなく、ワクチン接種者に対するメリットを与えようという根拠が中心になっていると感じられる。それでは検疫当局を押し切ることはできない、というのが、私の見立てである。

そうなれば、入国規制を緩めるためにはワクチン接種を条件にすることはできない。入国規制を緩めるには、前回の記事に書いた通り「ゼロコロナ政策」を見直すしかないのだ。

見直すために一番簡単な方法は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けをインフルエンザ並みに下げることである。そうすれば政府も「国内でインフルエンザ並みの対応の病気に、入国時だけ過剰な対応を取る必要はない」として検疫当局を押し切れるだろう。

今回の緩和も待機期間の短縮ではなく、待機期間中の行動を管理することで移動を許可するのであり、9月3日の記事で書いたオリンピック関係者の隔離免除と理屈は同じなのである。今記事を読み返して気付いたが、「オリンピック関係者は隔離免除されていた」という表現も適切ではなかった。

日本の防疫指針が変わらない限りは、9月29日の記事に書いた通り、感染症法上の位置付けがインフルエンザ並みに下がらない限りは、入国時の隔離条件が緩和されることはないと思う。

また今回は留学生や技能実習生の入国が許可された。これは検疫(Q)ではなくビザの取扱(I)の変更になる。以下の記事に書いた、I条件での対応だ。

新型コロナ対策の国境措置は「CIQ」のうちのどの対応なの?

これは単に外国人が入ってくると感染が広がるというイメージから政府がビザの発給を止めていただけで、防疫上は根拠がなかった。緩和されても入国時の14日間待機は課せられるのであるから、もっと早く許可できていたはずだ。

ついでに別の話題を付記したい。上記記事で最後に書いた部分を引用する。

そのため、こういう民間の認証制度は統一された方が便利だとは思うが、それとは別の政府による「安全証明」は必要で、できればEU基準に準拠したものを日本政府に早期に作って頂きたいと思う。

現状、日本はEU基準に準拠したワクチン接種証明を発行していない。11月8日からアメリカは外国人入国者にワクチン接種証明の提示を義務化するが、日本の接種証明が有効なのかは、11月5日時点で外務省は把握していないとHPに記載されている。もしかすると日本の接種証明は無効で、11月8日以降日本人はアメリカに入国できなくなる可能性もあるのではないかと思っている。この件については後日記事を書くつもりだ。

hee gin tan/iStock