ラーメン産業を支えているのは、苛烈極まりない競争環境である。おいしくないラーメン屋は、直ちに淘汰される。しかし、淘汰されても、淘汰されても、新たなラーメン屋が開業されていく。その起業家精神の横溢により、ラーメン産業は成長しているのだ。
ラーメン産業における新規開業が極めて活発なのは、人的資本が決め手になる産業なので、開業に際して大きな資金調達を必要としないからである。つまり、ラーメン産業は、資本を必要とせず、参入障壁が低いからこそ、競争が激烈になるのであって、資本主義以前の産業なのである。
ラーメン産業を資本主義化するためには、投下資本が規模の経済をもたらし、資本が自己増殖していく構造に転換しなければならない。例えば、ラーメン職人の技術がロボット化され、その開発と製造に大きな資本を投下することが必要になったとき、競争の舞台が職人の腕前からロボット技術に移行したとき、ラーメン産業も資本主義の仲間入りをするのである。
しかし、人間の生活の全てが資本主義の経済原理に取り込まれることは決してない。ラーメン職人に限らず、鮨職人も、板前も、決してロボットにとって替わられたりはしない。誰も、ロボットの作ったものを食べたくはないからである。
食文化の職人だけでなく、全ての職人というプロフェッショナル、弁護士等の知的プロフェッショナルも含めて、全てのプロフェッショナルは、決してロボットに負けない。逆に、ロボットに負ける人はプロフェッショナルではないわけで、ロボットに負けない人だけが真のプロフェッショナルと呼ばれるのである。
競争が産業の成長を促すとしても、競争には、ロボットに化体した資本による競争と、プロフェッショナルの人的資本による競争があるわけだ。
森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
twitter:nmorimoto_HC
facebook:森本 紀行