アゴラの杉山大志さんの記事「IPCC報告の論点58:観測の統計ではサンゴ礁は復活している」で、オーストラリア・クイーンズランド州の世界最大の珊瑚礁、グレートバリアリーフのことに触れられていました。
その記事では、「もっとも有名なサンゴ礁であるグレートバリアリーフについて、筆者の知っている観測の統計では、サンゴ礁の被覆面積は増加し、2020年には観測史上最大になった」にも関わらず、その朗報を示すデータや図が「IPCC報告に載っていない」だそうです。その代わりに載っているのは時間軸もバラバラで「珊瑚礁の白色化が起きている」と勘違いしやすい図だそうです。
グレートバリアリーフは僕の住んでいるクイーンズランド州の宝。そして僕自身も数度スキューバダイビングでその美しさを満喫したところです。ぜひ日本の皆さんにも、コロナ後にクイーンズランド州に来てもらって、この素晴らしいグレートバリアリーフの自然を楽しんでもらいたいと思っているところです。
それなのに、もしIPCCが珊瑚が地球温暖化で死滅しかけているという印象を持たれる嘘情報を流しているとしたら、観光業で成り立っているクイーンズランド州に多大なるイメージダウンをもたらすので、その勘違いしやすい報告書には憤りを感じます。
そこで、このアゴラの記事の元ネタの豪州政府、Australian Institute of Marine Science (AIMS)が発行した12ページの以下の報告書をダウンロードして、事の真相を確かめてみました。
サマリー部分をGoogle翻訳したのが以下の文章です。
このレポートは、2020年8月から2021年4月の間に実施された127のサンゴ礁の長期モニタリングプログラム調査から、グレートバリアリーフのサンゴ礁の状態をまとめたものです。
AIMSによる35年間の監視を通じて、GBRのサンゴ礁は障害後に回復する能力を示してきました。
全体として、127のサンゴ礁のうち59は、中程度のハードコーラルカバーを持ち、36のサンゴ礁は高いハードコーラルカバーを持っていました。
この報告書はたったの12ページで、高校生レベルの知識で読めるすごくわかりやすいものでした。
調査方法の Manta Tow Surveysというのは、長さ200m幅10mの領域をボートに引っ張られたダイバーが写真撮影をしながらハード珊瑚とソフト珊瑚の海底に占める面積を調べるものだそうです。492箇所の珊瑚礁をManta Tow Surveysで1985年から2021年までの35年間続けているという事です。データーはグレートバリアリーフの北部、中部、南部の三つの大きな領域に分けて分析しているようです。
その結果、1985年から2010年までは特に大きな変化はなく、2010年ごろに大きな珊瑚礁の減少が起こっているけど、それが最近までに回復してきているということです。珊瑚の減少や白色化は、暖かい海水が止まることと珊瑚を食べるヒトデの数と関係があるようですが、地球温暖化とは直接の関係は無いように思えます。
アゴラの記事で杉山大志さんが指摘されているように、ここ数年の珊瑚の回復は地球温暖化に警鐘を鳴らすには不都合なデータ、あるいは関係ないデータなので、IPCC報告には載せられていないのでは?その代わり、データーをこねくり回して、一瞬見た目は温暖化で珊瑚が死滅しているような印象を与える、誤解しやすいようなグラフが掲載されているのでは?と勘ぐりたくなります。
冒頭でも言いましたが、観光業で成り立っているクイーンズランド州に多大なるイメージダウンをもたらすので、その勘違いしやすいIPCCの報告書は訂正していただきたいです。もしくは、素直にAustralian Institute of Marine Science (AIMS)が発行した12ページのメインのグラフのみを示してもらいたいと思います。