米中間選挙の前哨戦:「2000-mules」と「J6公聴会」(後編)

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チェイニーは次のように述べて発言を結んでいる。(この間、彼女は縷々述べているが、紙幅の都合で省略する。元資料のURLリンク

この最初の調査結果を発表するにあたり、2つの点を心に留めておいて下さい。
第一に、我々の調査はまだ進行中であり、ここで公開するものが最終的に開示する情報の完全なものではありません。
第二に、司法省は現在、協力的な証人と協力しており、暗号化通信などから特定した情報の一部のみを今日まで開示してきました。

こうしたメニューを見ると、トランプ弾劾に失敗した民主党ペロシ下院議長の肝煎りで、トランプをビンラディンに擬え、「9.11委員会」を模して設けたこの委員会の「J6公聴会」は、1年前の弾劾裁判の蒸し返しに思えなくもない。

(前回:米中間選挙の前哨戦:「2000-mules」と「J6公聴会」(前編)

実施済の1回目と2回目について種々報道されているが、ここではチェイニーが、「トランプ」が「実際には選挙に負けたことを知っていたことをご覧頂く」と啖呵を切った2回目の公聴会について、『The Hill』のレポーター、レベッカ・ビッチュが同紙に書いたことに触れておく。

12日の「2回目の公聴会で、トランプの『大嘘』が主役になる」と題した記事で、ビッチュは、1回目の公聴会でバー元司法長官が「疑惑の根拠は全くない」、「トランプ氏の主張は “全くのナンセンス”」と述べた映像を2度流し、イヴァンカ氏が「彼(バー)が言っていたことを受け入れた」と述べているクリップを見せたと書く。

13には、バー氏がトランプ氏に「司法省は選挙の味方でも、貴方の弁護団ではありません」と述べたところ、「彼は聞いていないようで、私や他の閣僚からの助言に耳を貸さないのではいけないと思った」と述べたとし、続けて「委員会は、トランプ自身が有権者の不正がないことを知り、国民を欺いていることに気づいていたことを直接示すことができなかった」と書いている。

この反トランプと思しき記者が13日の記事に書いた後段(太字部)は、チェイニーの発言と明らかに矛盾する。

黙っているはずもないトランプは13日、12頁の声明を出した。詳細は原文をお読み願うとして、要点を述べれば、冒頭で、史上最高値のガソリン価格を筆頭にインフレが蔓延し、船は貨物を降ろせず、家庭は粉ミルクすら手に入らない等々、昨今の経済の大混乱を難じる。

次に、アフガン撤退で大失敗し、何百万人もの不法入国者が国境に向けて行進しているのに、政権は崩壊し、民主党は今週、バイデンを再選に相応しくないと宣言した。その民主党が集中しているのが、このカンガルー裁判だ。米国民が被っている大きな痛みから目を逸らすためだ、と述べる。

そして声明は、6月2日に観たばかりの「2000-mules」の内容をなぞるように、2021年1月6日の出来事を以下の項目に従って縷々述べる。

  1. インチキ調査(The Sham Investigation)・・「もし彼らが本当の証拠を持っているならば、平等な代表者を集めて本当の公聴会を開くだろう」と会の構成が会則に即していないことや、「なぜ反対意見を聞かせることができないのだろうか」と難じる。そして、そもそも解明すべきは1月6日のことでなく、11月3日(投票日)のことであるべきで、「この声明でそれを書く」とする。
  2. 票数え停止(Stop the count)・・11月3日以降の投票の数え方に対する疑念。
  3. 投票用紙の密売(Ballot Trafficking)・・「2000-mules」で検証されたGPSデータに拠れば、同じGPSデータが複数回(時には10回も)同じDropboxを訪れている等々の疑念。
  4. 数学(Math)・・激戦州での「投票用紙密売」が結果の逆転を生じさせる可能性の計算。
  5. しかし、もしもっとあったなら(But What If There Were More)・・3.と4.の再検証。
  6. オッズを無視(Defying the Odds)・・1980 年以降、必ず大統領選の勝利候補に投票する郡が 19 あり、そのうちの18で20年にトランプは勝利した。地下室から出ず、プロンプターなしでは話せないバイデンは、そのうちの重要な接戦州でのみ、オバマを上回った。ありえないことだ。

ザッカーバックス(Zuckerbucks)・・ ザッカーバーグはこの選挙に4億1900万ドルを寄付した。イリノイ州のリベラルなNPO、CTCLが少なくとも3億5千万ドルを受け取った。CTCLはオバマ財団フェローとオバマが任命した人物で構成される急進左翼組織で、ほぼすべての資金は、全米50州の47州とワシントンD.C.の民主党が運営・管理する地域に送られた。

不公正の蔓延(Pandemic of Injustice)・・11月3日の夜から、米国人は「何かおかしい」と感じていた。すぐに全米市民が選挙に関する情報と説明を求めて裁判を起こし始めた。連邦最高裁の判事も含め、判事たちは怖がっていた。テキサスの訴訟をどう扱うかについて、判事たちは怒鳴り合いになり、激しく議論したという噂が流れた 。結局、判事たちは、民主党が長年にわたって展開してきた恐怖政治に屈し、この訴訟を棄却した。続いて、全ての下級裁判所が、ほとんど目を通すことなく、訴訟を棄却した。

さて、11月の中間選挙に向けて、米国民は「2000-mules」と「J6公聴会」のどちらにより心を動かされるのだろうか。6月3日と14日、米国の世論調査(共和党寄り)ラスムセンは「2000-mules」と「J6公聴会」についての調査結果を載せている。

「2000-mules」に係る3日の結果では、それを見た者の77%が「組織的かつ広範囲な不正行為が20年にあったという確信が強まった」と答え、「弱まったと答えた人」は19%だった。「観ていないと答えた者の70%も映画の題材を理解」しており、それが20年の選挙結果を変えるに十分な不正行為があったと主張していることを知っている。

また既に観た有権者のうち、「共和党員の85%、民主党員の68%、無所属の77%」が、この映画によって「20年の選挙で組織的かつ広範囲な選挙不正があったという確信が強まった」と回答し、その78%が「政治的信条にかかわらず他の人に勧めたい」と回答している。

「J6公聴会」に係る14日の結果では、それを視聴するかどうかについて、有権者の20%が中継を「すべて見る」と答え、14%は「ほとんどを見る予定」、22%は「一部しか見ない」、39%は「全く見ない」と答えている。

ニールセン・リサーチのデータを引用してニューヨーク・ポスト紙が伝えたところによると、9日夜の2回目の公聴会を見た米国人は2000万人を超え、今年のアカデミー賞授賞式を見た数よりも多いそうだ。

果たして「2000-mules」と「J6公聴会」のどちらが、11月の結果により大きな影響を与えるのだろうか。が、その前の8月16日には、ワイオミング州の選挙区でリズ・チェイニー自身がトランプの刺客ハリエット・ヘイグマンと戦う予備選がある。全米の注目必至だ。