12人の国会議員、ジェンダーを語る④

衛藤 幹子

先月以来、ジェンダーに関する国会議員インタビューを紹介している。12人の方々との面談は合わせて10時間近くに及ぶ盛り沢山の内容であったが、そろそろ新しい話題を取り上げたくなったので、今回をもって終了する。

(前回:12人の国会議員、ジェンダーを語る③

— 政党内の女性議員

昨年の2月、自民党の二階俊博幹事長(当時)が、同党の女性議員の強い要望を受けて、党幹部会議に女性を5人程度ずつ出席させる旨を発表した。ところが、内実は発言権のないオブザーバー資格であった。

いかにも「前近代」丸出しのエピソードであるが、私のインタビューでも同様の話があった。1993年に、32歳で初当選を果たしたMs. L は、党の要職と大臣を歴任、自民党議員として申し分のないキャリアを築いてきた。その人物をして、「ボードメンバーになったとしても、中核に置いてもらっていないな、内閣でも肝心要の所で外されているかな、といった疎外感はいつも感じます」と言わしめる。さらに同氏は、自民党には「大切な政策は数人の専門知識のある議員で決める『インナー』制度」なるものがあり、「このインナーにはほぼ女性は入っていない」と述べる。なぜ女性が入れないのか。インナーの一人は、「まだキャリアがない」、「専門性がない」との理由を挙げたという。

仮にMs. Lがキャリアや専門性がないのなら、インナーの議員はどれほど輝かしいキャリアと学者顔負けの専門性を持っているのだろうか。昔、女性を子どもと同列に扱う「女子ども」という言い方があった。女性を軽んじる差別的表現だ。私は、Ms. Lの話を聞きながら、忘れかけたこの言葉を思い出した。

ジェンダー平等を掲げる立憲民主党には、こうしたあからさまな女性蔑視はないと思われるが、それでも女性議員の活躍を阻む壁は存在する。幼い子どものいるMs. Eは、「子育てするようになって、自分の時間を24時間仕事のために使えない」なかで、何とかしたいのが夜の会合である。Ms. Eもそれを100パーセント否定しているわけではないが、「やはり昼間の会議でものが決まっていくという習慣になる必要がある」と考える。夜の会合や飲み会は、子育て中の女性を悩ます問題の一つだ。しかも、このような場で重要な決定がなされることも少なくない。表面は取り繕っても、党内には男性社会のやり方が残っているということだ。

SeanPavonePhoto/iStock

— 女性支援策

20年近いキャリアを持ち、党の要職を担うMs. Eでさえ、働き方に悩むのであるから、新人女性議員/候補者を取り巻く困難は推して知るべし。そこで、野党党首のMr. Dは、自らの党が実践する対策の一部を紹介してくれた。

まず女性候補者には「家庭との両立を経験した先輩議員がハンズオンで支援」する。たとえば、「当選した後どういう風に家庭と両立すればよいのか、ハラスメントにどう対応するのかなど、経験者である現職女性議員をしっかり付けて手取り足取りフォローするサポート体制を強化」している。また、今後の取組みとして、女性選対職員の育成を挙げる。「選挙対策をやっている党職員はほとんど男性なので、女性ならではの問題は相談しづらく、気軽に相談ができるようにするため、党の選対の担当に女性職員を置くこと」を考案中だという。

— 女性議員の代表性

当然のことながら、女性議員だから女性有権者を代表すれば済むわけではない。女性議員として、どのように有権者を代表するのか。二人の意見を挙げておこう。まず若手のMs. Bは、「人生の大先輩から生まれたばかりの赤ちゃんまで全ての国民の声を聞く、結局それが政治であり、赤ちゃんたちは声を発する事はできないけれども、だからこそ、彼ら彼女たちの将来に責任を持てる政治にしないといけない」、そのためには「政策決定・意思決定の場に幅広いバックグラウンドを持った人たちが一堂に会することがやはり重要である」と指摘する。

一方、ベテランのMs. Lは、同僚 のMr. Oに聞いた話から一人の人間の持つ多面性に着目する。Mr. O はLGBTQをどの議員よりも熱心に取り組んでおり、そのMr. Oによると、「LGBTQというのは確定的ではない、確定的な人もいるけれど、たとえば自分は異性愛者だと思っていても場面や年齢によって変わり、固定化されるものではない」。Ms. Lはこの考え方に深く共感し、「有権者も同じです。有権者も含めて全て固定化しないという前提で政治を考え、他の人を傷つけることなく、それによって利益を得る人がいるという確証があれば、それを構想するのが政治」だと考える。

12人の方々へのインタビュー、学ぶことが実に多かった。お忙しいなか、快く面談をして下さった皆様に心より感謝を申し上げたい。

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