欧州の「同調圧力と性」について日本人は何も知らない

以前の記事では欧州ではセクシーな水着が好まれており、それには欧州の歴史や宗教観が関係があると説明した。

私が2021年12月に出版した「世界のニュースを日本人は何も知らない3 – 大変革期にやりたい放題の海外事情」という本にも書いたが、日本の左翼がジェンダーレスが進んでいると言い張っている欧州は、 日本人が想像する以上に男女の違いを強調する社会であり、セクシーであることを好む社会だ。

前回の記事で 紹介したように、男女の賃金格差が小さくなっているイギリスや、男っぽい男性が多いと思われているドイツでさえ、プールやオフィスでセクシーな格好をすることはごく当たり前なのである。

スペインやフランス、イタリア、ギリシャ、そして東欧各国ではセクシーであることが北部よりも更に重要だ。

Aja Koska/iStock

これはある意味日本にはあまり存在しない社会的な同調圧力ということも言える。

セクシーでなければならないということは、つまり実は結構ルッキズム、見た目による差別が厳しいということだ。

これは私が実際に現地で生活してみて感じることである。

日本にももちろん見た目による差別はある。 ところが日本における差別のポイントや同調圧力というのは欧州とはちょっと違う。

近年の日本はどちらかという「かわいさ」や中性的なことが好まれる。 昭和40代ぐらいまではどちらかと言うと欧州に近い感じがあったと思う。 男は男らしく女は女らしくという感じで、それが変わり始めたのは私が学生だった1990年代ぐらいのような気がするのである。

セクシーでなければならないという風潮のピークは日本ではバブルの時期ではなかっただろうか。

女性は真っ赤な口紅に長いワンレングスの髪の毛でボディコンのワンピースを着るのが当たり前だった。

男性は肩パットを入れまくって体の大きさを強調したジャケットに、ゴキブリのようにギラギラに光る髪の毛、巨大なサングラスをしてタバコを吸いまくるという男性性を強調したようなファッションが流行っていた記憶がある。

しかし、そういったものは日本では今はすっかり消え去ってしまい、中性的な男性やだぶだぶの服を着たおとなしい感じの女性が好まれている。

うちの家人は イギリス人であるが、日本の街中を歩くと男か女かよく分からない人が多いから判断に困るというのである。

特に日本の 女性は大変ボーイッシュな格好の人が多く、そもそも年を取っていても若く見える人が多いので年齢も不明なのだが、少年のような髪型をした人も多く、男性と間違えることが多いというのである。

そして ゆるゆるとしたズボンの人も多いので服装でも男か女か判断するのはとても難しいのだというのである。

私が見るとどう見ても女の人だと分かるのだが、どうも欧州の基準だと判断に困るという感じなのだそうだ。

さらに日本で美容院や床屋に行くと大変困ると言っているのが、男性用の髪型なのだが女性がするようなショートカットにされてしまうので非常に困るというのである。

欧州基準だと女の髪型だと思われてしまうので、日本でどうやったら欧州の伝統的な七三分けとか慎太郎刈りにしてもらえるのかということを真剣に話しているのである。

確かに日本ではいまどき七三分けの人は税務署でもなかなかいないので注文が非常に難しいだろう。

このように日本では実は性別をあまり強調しないような髪型やファッションが許容されているという非常に珍しい先進国なのである。

つまりそれはどういうことかというと実は日本というのは割と性差の縛りから重要なところで、ある意味近代の先端を言ってしまっているポストモダンな社会なのであるということが言えるのではないだろうか。

しかも街中でミリタリーファッションやコスプレをしていても誰が何を言うわけでもない。「そうですか、あなたはそういう趣味なんですね」で終わりである。

ところが日本の左翼がリベラルだとか先進的だとか言い張っている欧州にはこんな自由はないのである。

セクシーな格好ができない人間と言うのは教室の片隅で殴られても仕方がないようなスクールカーストの底辺層認定である。

社会生活を営む上ではマイナーな存在として生きていくほかない。

スクールカースト底辺へのいじめや扱いは、日本では想像できないほど陰湿で暴力的だ。欧州はまだ緩いほうだが北米はもっと直接的だ。だからそういう人は、オタクや地味な人間が生きやすい日本へやってくる。日本は地味な人間がひっそりと生きていける楽園なのだ。

欧州の男女はけっこう大変だ。厚い胸板や、盛り上がった臀部を誇示するためにジム通いを欠かさない人がかなりいる。

欧州のジムはどこの国に行っても「筋肉盛り上げ系」のマシンやクラスが大盛況で、日本のように年寄り向けのアクアビクスとか健康体操のクラスがほとんどない(だから単に肩こり解消のために行きたいだけの自分には参加できるものがない)。

ジムはお色気ムンムンの「現役の男女」で大盛況で、日本のように暇つぶしの高齢者はいない。

男の場合、日本のように中性的な髪型は許されないし、トートバックを持って出勤することは許されない。

中性的な格好でいると頭がおかしい人間扱いをされる。会社ではまず昇進できないし、裏で悪口を言われ、ストリップバーやジェントルメンズクラブには誘われない。

スポーツクラブやビーチでも、年寄りであっても体を強調するようなセクシーなスポーツウェアや水着を着るのが当たり前だ。

水着の場合、男は芸能人水泳大会で一般的だったようなブーメラン型のあのブリーフ。ピチピチでセクシーさをさらに強調である。色も意味なものではなく、真っ赤とか蛍光色などで、日本のプールだと目立ちまくるのだ。

一般人が西城秀樹真っ青のギャランデューをやらねばならない。これはこれで結構きついのである。