10月25日、佐倉市選挙管理委員会から封書が届きました。
市中に設置している立て看板やポスターの掲出は、公職選挙法違反になる可能性があるという注意喚起の手紙で、趣旨からいえばすべての市議会議員に送付されたものと思います。
さて、私はおそらく佐倉市議会議員で唯一であると思いますが、前回の選挙の後、佐倉市内に一切のポスターや立て看板を設置していない議員です。理由は、
- 自分の顔や名前で佐倉市の景観を乱したくない
- 公職選挙法を前提とすると「違法としか思えない」掲出事例が多く、「そういう人たち」と同類の議員と思われたくないという意地
というところです。
違法性の根拠
公職選挙法の143条16の1では、議員や候補者の名前や写真がある政治活動用の立て看板等は「候補者または後援団体の政治活動の事務所」にあるもの以外「違法」です。
さらに、選挙管理委員会から「証票」を交付されたもの以外は違法です。ちなみに、市議会議員や市長の証票申請は、候補者分に6枚、後援団体分に6枚の合計12枚まで許されています。
立て看板についてまとめると、
佐倉市をはじめとする一般市の政治活動用の立て看板等は、「候補者または後援団体の政治活動の事務所」にある、証票が貼られた12枚以外は「違法」。
ということになります。
また、そもそもベニヤ板やプラスチック板などで裏打ちされた候補者ポスターは、時期を問わず違法です。
違法性が疑われる事例
佐倉市でも、違法性が疑われる例は数え上げればきりがありませんが、一つだけ事例紹介します。
京成臼井駅南口駅前の駐車場に、複数の市議会議員や候補者の立て看板が並んでいます。駐車場が政治活動用の事務所であるはずがないので、これは違法である可能性が高いと思い、選挙管理委員会に聞いてみました。
すると、選挙管理委員会からは「駐車場は、隣接するテナントビルと一体化しており、問題ないという判断」という回答がありました。
そこで私は「駐車場と一体化している」と判断したテナントビルに、当該候補者あるいは後援団体の政治活動用の事務所はあるか?と聞いてみました。
すると、基本的に公職の候補者の申請は正しいものととらえており、申請要件を満たしていれば、証票発行のための調査はしていない、という回答でした。
驚いたことに、基本的に申請があったものは、ある程度書類が揃っていれば選挙管理委員会は調査することなく証票を発行していたのです。
選挙管理委員会事務局は政治家に指導しづらい立場
選挙管理委員会事務局のメンバーは、どの市町村でもそのほとんどが市役所職員ですから、2、3年で市役所に戻ることになります。よって、市長や議員の選挙や政治活動について、「これはよくないですよ」と言いづらい立場にいる人たちです。
もし自分の助言や指導で市長や議員が気を悪くしたら、自分が役所に戻ったときに何をされるかわからないからです。その意味でいえば、非常に気の毒な人たちともいえます。
私は、選挙管理委員会事務局については、市の職員が出向する形式自体に問題があるように思います。
結局議員や候補者の倫理観の問題
公職選挙法は、確かにおかしなところの多い法律です。
しかし、だからと言って破っていいわけがない。まして、市民の代表として条例の議決権を持つ議員なら、率先して法を順守しなければならないのは自明です。
にもかかわらず、このような「違法性が疑われる事例」は佐倉市以外でも多く見られます。その理由は、「知名度を高める」効果があるからです。
実体験としても、近隣他市で顔と名前が一致する議員や候補者は、そのほとんどが車から見かけるポスターを通じてですから、残念ながら「身をもって効果を体験している」ことになります。
しかし、本来の議員の仕事は「ポスターや立て看板の掲出先を探す」ことではありません。むしろ、駅前の目立つ場所や道端に延々と政治家のポスターや立て看板が並ぶ景観は、選挙的には効果的でも、「市の魅力」を半減させるものであると考えます。
できるなら、違法性が強く疑われる個所にポスターや看板を掲出している候補者には「票を入れない」という民意が日本に広く根付けばよいのですが、そのような広報をする機関は存在しません。
結局、議員の倫理観、順法精神に期待せざるをえないのですが、それだけではいつまでたっても状況は改善されません。次回佐倉市議会11月定例会で、アクションを起こしてみるつもりです。