賢者は歴史から学ぶ:『日本軍はなぜ満州大油田を発見できなかったのか』

2023年1月2日に言論プラットフォームアゴラで、岩瀬昇(著)「武器としてのエネルギー地政学」の書評動画記事を紹介してくださいました。その記事が僕の2023年はじめてのアゴラでの記事です。

日本の取るべき5+1のエネルギー戦略:『武器としてのエネルギー地政学』
僕は、9年間日立製作所(旧)エネルギー研究所にて沸騰水型原子力発電の核燃料の研究開発に従事し、その間、論文博士として九州大学からも博士号を授与していただきました。その後いまから23年前の1999年に、クイーンズランド大学で金属材料工学の博士...

その記事の最後に、以下のように呟きました。

勉強とは学校だけでやるものではなく、むしろ学校を卒業してからが大切。人生常に勉強し続けないといけないと強く思いました。

石油と天然ガス、それを巡るエネルギー問題で、昨年から岩瀬さんの著作を読んで、僕の中でその勉強がすごく楽しくなって来ています。

今回紹介する本は、岩瀬昇さんの著作3冊読んだうちの、出版年順に並べると2番目の本です。でも、今考えてみると、この順番で3冊を読むのが僕の中ではベストだったと思っています。

初めに読んだのは、

2014年10月出版の岩瀬昇(著)「石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?エネルギー情報学入門」

石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?エネルギー情報学入門
天然ガスと液化天然ガスの違いについて動画を作りました。そして、その動画は、アゴラでも紹介していただきました。 それを読んで(観て)くださった、石油と天然ガスの専門家の方、岩瀬昇さんから、ツイッターで以下のようなコメントをいただ...

この本で、石油と天然ガス、液化天然ガスの資源での上流投資、中流投資、下流投資の三つの投資。その技術的な問題点や輸出入に関する基礎的なことを知りました。それら資源の開発は両国間の信頼と長期契約が必須で、「Take or Pay」という条件が前提で成立しています。

そして、その次が、

2022年12月出版の岩瀬昇(著)「武器としてのエネルギー地政学」

日本の取るべき5+1のエネルギー戦略:『武器としてのエネルギー地政学』
僕は、9年間日立製作所(旧)エネルギー研究所にて沸騰水型原子力発電の核燃料の研究開発に従事し、その間、論文博士として九州大学からも博士号を授与していただきました。その後いまから23年前の1999年に、クイーンズランド大学で金属材料工学の博士...

今現在起こっている、世界のニュースが、「石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?エネルギー情報学入門」→「武器としてのエネルギー地政学」の順番で読むことで、僕の頭の中で論理立てて理解できるようになりました。

そして今回の書評は、

2016年2月出版の岩瀬昇(著)「日本軍はなぜ満州大油田を発見できなかったのか」

 

アマゾンの紹介文では、以下のような読書をそそる文がありました。

昭和初期の北樺太石油、満洲国建国時の油兆地調査、そして東南アジアの南方油田。そこには確かに石油があったのに、日本はモノにできなかった。そして石油政策なきまま、戦争へ突入する。

43年間、商社でエネルギー関連業務に従事し、現在はエネルギーアナリストとして活躍、『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』(文春新書)を上梓した著者が、戦前、戦中の石油技術者の手記を読み込んで明らかにした戦後71年目の真実。そこには現代日本のエネルギー政策への教訓があった。

ビスマルクの格言で「愚者は全てを経験から学ぼうとするけど、賢者は歴史から学ぶ」と言われています。明治維新から太平洋戦争の前までの、石油をめぐる世界の、そして日本のエネルギー事情を、日本軍の戦略を軸に著者の岩瀬さんがタイムマシーンに乗って現地から実況しているような錯覚に囚われる感じでの読書でした。

僕らは、その歴史の「結果」は色々な書物や映画、歴史教科書で知っているのですが、「石油技術者の手記」という歴史資料からの分析は、43年間商社でエネルギー関連業務に従事された岩瀬さんの経験あってのものだと感心して、読んだというわけです。

昔TVドラマで「刑事コロンボ」という番組があり、僕はそれが大好きでした。「刑事コロンボ」はドラマの初めに観ている人には犯人がわかります。コロンボは犯人を知らないのですが、どんどん犯人を追い詰め、最後には、犯人を突き止める、その過程を視聴者は楽しみます。本書にも、「刑事コロンボ」に似た面白さがありました。

本書から学んだことは、「エネルギー確保での、上流、中流、下流それぞれの重要さ。そして、歴史は繰り返される」ということです。昨今のサハリンでのLNGプロジェクトでも、歴史は繰り返されるのでしょうか。

著者の岩瀬昇さんの「現代日本のエネルギー政策への教訓」をぜひ皆さん、噛み締めてみてはいかがでしょうか。

動画のノギタ教授は、豪州クイーンズランド大学・機械鉱山工学部内の日本スペリア電子材料製造研究センター(NS CMEM)で教授・センター長を務めています。