4度目のトランプ起訴の元凶は「WaPo」の「spin」記事

横文字だらけの表題で恐縮だが、米国のニュースなのでご容赦を。「WaPo」はAmazon創業者ジェフ・ベゾスが10年前に買収した反トランプ紙「ワシントン・ポスト」のこと。またこの場合の「spin」は「紡ぐ」や「回転」ではなく「印象操作」、つまり「朝日新聞」の言う「edgeを立てる」ことだ。

ワシントンポストのトップ画面

15日の昼、「78年前の今ごろ日本国民は、天皇陛下がポツダム宣言受諾を告げるあの途切れ途切れの玉音放送を聞いていたんだなあ」などと夢想しつつPC画面を眺めていると、「Why Georgia’s case against Trump could be so damaging」と題する「Axios」のニュースレターが舞い込んだ。

筆者のGmailアドレスに入る外国語のメールやニュースレターやメルマガは、便利なことにワンクリックで日本語にAI翻訳される。クリックすると「ジョージア州の訴訟はなぜトランプにダメージを与える可能性があるのか」との見出し記事だ

バイデン政権下のトランプ起訴は今年これで4度目。米国は建前こそ三権分立の国家だが、トランプはこれらに関わる検事や特別検察官は須らく民主党の「rabid partisan」(熱狂的パルチザン)だと喝破し、こう述べている。

Newsmax記事
斯くて魔女狩りは続く。”私はトランプを捕まえる “と言って選挙運動で資金を集めた、制御不能で非常に腐敗した地方検事(筆者注:ファニ・ウィリス)によって、前米国大統領の私を含む19人が今夜起訴された。大陪審が投票するずっと前に出し、すぐ撤回された起訴状はなんだったのか?(筆者注:14日に一度出されて撤回された起訴状のこと)私には八百長に思える!なぜ2年半前に起訴しなかったのか?私の選挙運動の真最中に起訴したかったからだ。魔女狩りだ。

Axios記事
マンハッタンのアルビン・ブラッグ検事、錯乱したジャック・スミス、ニューヨーク州検事のレティシア・ジェームスと同様、ジョージア州フルトン郡の急進民主党地方検事ファニ・ウィリスも、これらの偽の起訴を通じてトランプ大統領を訴追するという綱領を掲げて選挙活動をし、資金集めをしている熱狂的パルチザンだ。

ブラッグ検事はセクハラの揉み消しに選挙資金を使った容疑、スミス特別検察官は21年1月の議事堂襲撃を使嗾した容疑、ジェームス検事は民事の金融詐欺容疑、そして今回だ。15日夕方の「BBC」記事は、ウィリス検事の98頁の起訴状にはトランプと関係者18人の訴因41件が記されていると書く。

トランプの訴因13件は、脅迫に関するジョージア州法違反、公務員に対する宣誓違反の教唆、公務員になりすます共謀、第一級偽造の共謀、虚偽の供述および記述と虚偽文書の提出などで、被告ら「犯罪組織」は、証人への圧力、コンピューターへの不法侵入、窃盗、偽証などの罪を犯したともとしている。

なかでもマフィアのような犯罪組織対策として70年に整備された、「威力脅迫および腐敗組織に関する連邦法(RICO法)」違反は重罪で、違法行為の実行者と指示を出した者を繋ぐ上で検察にとって有用な法律であり、最大で禁錮20年に処される可能性があるという。

訴因の内、「脅迫」や「違反の教唆」などが関係すると思われる21年1月2日の電話の内容について、筆者は同年1月7日に本欄拙稿「トランプの電話騒動で改めて思うメディアの偏向」で次のように書いた。

トランプは、署名の検証を行う唯一の方法は、11月に署名したものを2年前、4年前、6年前とすることだが、コブ郡でそれをしなかった。フルトン郡でそれをすれば、署名さえされていないもの、偽造されたものも沢山あることに気付くだろう述べた。

これが選挙結果を覆すための恫喝だろうか。数ある不正証拠の数件で11,779票差を逆転できると例示的に述べているが、基本的には選挙不正の調査を求めているだけだ。(略)

改めて実感するのは、米国が一国一城の各州の集まり、すなわち合衆国であること、州の間や同じ州内でも都市部と郊外で支持政党に極端な差があること(ある種の分断か)、そして大手メディアの不十分な取材と偏向報道ぶりだ。

今回、筆者は改めて「Exclusive ‘I just want to find 11,780 votes’: In extraordinary hour-long call, Trump pressures Georgia secretary of state to recalculate the vote in his favor」と題するエイミー・ガードナーの21年1月3日の「WaPo」記事、そして電話の文字起こし全文を読んでみた。

AI和訳で約6,900字の記事の見出しは「独占 “私はただ11,780票を見つけたいだけだ”:1時間に及ぶ異例の電話会談で、トランプ大統領はジョージア州国務長官に自分に有利な票数を再計算するよう圧力をかけた」との邦訳だ。他方、電話の文字起こしはAI和訳で約28,400字、記事の約4倍の長文。

共和党には、そもそもトランプの要請した署名検証に一言も触れていないこの見出し記事のせいで直後に行われた上院の決選投票と補選の両方を接戦の末落とし、民主・共和50vs50で最終的にカマラ・ハリスVPが民主側につく今日の状況に陥った、苦い経験がある。

そして文字起こしを改めて読んだ感想は2年半前と同じ。トランプは、投票用紙の署名の確認、すなわち選挙人登録の原簿の署名と、主として郵便投票されて投票用紙の署名とを突き合せをするべきだ、と繰り返し主張をしている。主張箇所(不連続)を以下に引用する(ヒルベルトはトランプ側、ジャーマニーは州側の弁護士。太字と和訳は筆者)

トランプ:フルトン郡に保存されている署名に遡ってその署名の真贋を確認すれば、少なくとも数十万件の偽造された人々の署名が見つかると私たちは考えています。そして私たちはそれが起こるだろうと確信しています。

トランプ:・・私たちに任せてもらえれば、署名検証を行うことができ、何十万もの署名が見つかるでしょう。そして、それを行う唯一の方法は、ご存知の通り過去に行くことです。がし、コブ郡(筆者注:問題となっているフルトン郡とは別の、数え直しをした郡)ではそれをしなかった。あるページを別のページと比較しただけです。署名検証を行う唯一の方法は、11月に署名したものから順に移動することです。最近。そして、2年前、4年前、6年前、あるいは1年前と比較してみて下さい。そして、様々な署名があることが判ります。しかし、彼らが投票用紙を捨てたフルトン郡では、署名さえされていない投票用紙や偽造投票用紙が多数あることが判ります。

ヒルベルト:そうです。そして、これは USPS のデータとあなた自身の国務長官のデータに基づいているだけです。従って、私達があなたに懇願し、お願いしたいのは、妥協と和解の手続きで私達と一緒に座り、登録された有権者IDと登録を実際に行うことです。24,149 が不正確であると納得して頂けるのならそれで結構です。しかし、私達はそれが明らかに 11,779 件を超えていると信じがちです。それ自体で結果を完全に変えるには十分です。ジャーマニーさん、それについてはどう思いますか?

トランプ:署名集計はいつ行うつもりですか、フルトン郡での署名検証はいつ行うつもりですか、あなたは行うつもりだと言っていたのに、今突然それを行わないのですか、いつそんなことやってるの?

ラフェンスペルガー州務長官は専ら、我々は3度再集計し1回は手作業で行ったが、ほぼ同じ結果だったなどと述べる。が、そもそもトランプが指摘するように「署名さえされていない投票用紙や偽造投票用紙」を大量に含む投票用紙を何遍数えたところで結果が変わる道理もない。本質は署名の検証だ。

今回の日本の報道も、「産経」のワシントン支局渡辺浩生記者の記事ですら、前任黒瀬を見習ったか、次のような記述をする体たらく。

通話記録により、トランプ氏が「私がしたいことはただ(票差を1票上回る)1万1780票を見つけることだ」と迫っていたことも明らかになった。

これでは2年半前の「WaPo」の「spin」記事の引き写しではないか!電話の文字起こしをキッチリ読んだのか!現地に居ながらこんな記事しか書けないなら日本に帰って来い!と思わず口を衝く。

これまでのトランプ起訴も筆者の見方では、「機密文書持ち出し」は機密の指定も解除も大統領のみに権限があるとする「大統領記録法」の解釈案件、「J6議事堂襲撃」の「選挙に不正はないと知りながら、不正を叫んで使嗾した」との嫌疑も、トランプのみならず74百万票を投じた支持者の多くが、今もあの選挙には不正があったと信じているのだから、罪に問える道理がない。

斯様にトランプ訴訟が政治抗争上の魔女狩り(Witch Hunt)なのに対し、バイデン親子の容疑はと言えば、個人資産の形成が目的の、しかも中国やウクライナやロシアを相手にした、低俗な汚職(corruption)だ。トランプは実業で財を成したが、人生の大半を政治家で過ごしたバイデン家の資産は一体どうやって形成されたのか。日本では藤山愛一郎の様な井戸塀政治家が敬われるが、米国では違うようだ。

こうした二重基準による政敵潰しが、公然と司法と大手メディアやビッグテックによって行われているのが目下の米国。ここは何としてもトランプに24年を勝ち抜かせ、「マルクス主義の第三世界の独裁国家」になったと嘆く彼に、その米国のドブ浚いを4年間させることが、米国がまともになる唯一の道だ。