フェイク論文工場の根絶へ

能登半島の方々は厳しい冬を過ごしておられるのに、この国の政治は何をしているのだろうと思う。派閥の会長を辞めたはずの人が、派閥の解散を声高に主張する。総理大臣を辞職した政治家が、内閣の総辞職を宣言することができないのと同様に違和感がある。この1点だけでも摩訶不思議な世界だ。

その上、どう考えても派閥の存在と裏金問題のすり替えが起こっている。不正を行っていない派閥もあるのだから、常識的に考えて、派閥があるから裏金が生まれるとの関係は成り立たない。派閥をなくすことと、資金を透明化することは別次元の課題であるはずだ。

そして、すべてを秘書の責任にという昭和時代を見ているような構造が、日本をむしばみ、日本の衰退を招いているのだ。多くの識者が脱税ではないのかと訴えているが、多くのメディアがダンマリを決め込んでいる。

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そして、科学の世界では根拠のない論文を生み出し、それを販売しているペーパーミル(フェイク論文製作工場)に対して大きなメスが入ろうとしている。1月19日のNature誌のNews欄に「Science‘s fake-paper problem: high-profile effort will tackle paper mills」というタイトルの記事が掲載されている。

嘘にまみれた論文が増えている現状は、大気汚染が急速に広がっているようなものだ。近年、科学の分野では真贋相混ぜた論文が発信され、科学の根底が揺るがされようになってきている。2022年に発表された論文の2%、50編にひとつがフェイク論文であったという推測もある。生成AIの発達に伴って、さらに多くの巧妙なフェイク論文が生み出されるだろう。当然ながら、これらを見つけだすプログラムも開発されつつある。

出版社・研究者の集団が、フェイク論文の摘発に向けた取り組みを進めており、記事にはねつ造拠点が、南アジア、中国、ロシア、イランなどにあると記述されていた。確かに、論文数を増やすことに汲々としている研究者にとって、何の労力も必要なく、お金だけで論文数を増やすことに気持ちが動いているのだろうが、砂上の楼閣は間違いなく簡単に崩れ去るものだ。デジタル雑誌が簡単に発行されるようになったが、科学は真偽取り混ぜ、複雑怪奇となった。

競争が激しいのでフェイクで実績を積み上げるのは仕方がないと擁護する声もあるが、お金がないので万引きをしてもいいという理屈と同じで、基本的な科学者倫理の問題だ。政治には表に出せないのお金が必要なので、裏金を作るのは仕方がないという言い訳と重なってくる。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年1月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。