ウクライナ軍がロシア領内へ「進出」:第二次世界大戦後初めて?

戦争が勃発してからロシア領内からの攻撃を甘んじて受け続けていたウクライナですが、ロシア領内への越境攻撃を本格的に開始しています。

ゼレンスキー大統領はロシア領内への越境攻撃が実行されたことを公の場で公言しています。

ウクライナ軍がロシアのクルスク州内に軍隊を進出させていることは、ロシア国営メディアも認めています。今回の越境攻撃が行われたという事実はプーチン政権にとっては戦況が悪化していることを示す悪いニュースですが、それを隠しきれない展開となっています。

アレクセイ・スミルノフ・クルスク州知事代行と会談するプーチン大統領 クレムリンHPより

ウクライナ軍は少なくともクルスク州内の28の集落の制圧に成功しているみたいです。

「今日現在、28の集落が敵の支配下にあり、クルスク地域の領土への侵入の深さは12キロメートル、前線の幅は40キロメートルである」とクルスク地域の知事代行はプーチン大統領に語った。プーチン大統領は彼の言葉をさえぎって、数字については言及しないよう言った。

ロシアにとって領土が海外の軍隊によって攻撃されるのは、第二次大戦中にナチス・ドイツに攻撃されて以来の出来事です。

ウクライナがロシア領内を攻撃することを辞めさせるにはロシア軍がウクライナ領内から撤退する必要があります。しかし、プーチン大統領としてあげた拳がおろせない状況です。

ゼレンスキー大統領はロシア領内を攻撃することで、プーチン大統領との「ディール」を目指していますが、越境攻撃を受けたことによりプーチン氏の態度が硬化することが危惧されます。そのような展開になれば、ロシア軍はさらなる報復を用意する必要性に迫られます。

ウクライナの越境攻撃は同国の「弱さ」を露呈しています。現在、ウクライナは軍人の高齢化や弾薬不足、そして支援国の「支援疲れ」など様々な課題を抱えており、手札が少なくなっています。それらの要因を考慮するとロシア領内への攻撃は危険をはらんだ賭けであるという見方もできなくはありません。

しかし、ロシアは第二次世界大戦が終結してから前例のない領土攻撃を受けているものの、クルスク州を防衛するために東部戦線からの部隊の移動を行っていません。これはロシア軍の余裕の表れであるという見方も。

ウクライナ軍の越境攻撃はどこまで拡大するのでしょうか?そして、それは停戦をめぐる交渉にどのような影響を与えるのでしょうか?

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