大手商社、コンテンツ産業の海外展開に本腰

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12/1産経新聞のオピニオン 日曜経済講座「国注力のコンテンツ産業に援軍 大手商社が本腰、海外展開弾み 経済部編集委員・佐藤克史」と題する記事は以下の書き出しで始まる。

国が経済成長の柱の一つにしようと力を入れる漫画やアニメ、映画、音楽などのコンテンツ産業の海外展開に頼もしい援軍が加わった。世界各国に拠点を構え、現地の事情に精通する大手総合商社だ。

以下、記事から抜粋する。

コンテンツ産業は 趣味や娯楽に過ぎないなどと感じられてきた面もあった。そんなコンテンツ産業に大手商社が本腰を入れ始めたのは、国が進行へかじを切ったことが大きい。

日本貿易振興機構(ジェトロ)などによると、コンテンツ産業の2020年の世界市場は約1.1兆ドル(約169兆円)。25年には約1.3兆円(約200兆円)まで拡大が見込まれている。国内市場の成長率は人口減などの影響で2%台と低いが、世界全体ではアニメや映画が30%近い成長率となっている。国はこうした需要を取り込もうと、コンテンツ産業を「基幹産業」と位置づけ、国際競争力を高めることを決めた。

内閣府によれば、コンテンツ産業の輸出額は22年で4.7兆円、鉄鋼産業や半導体産業の輸出 に匹敵する規模となっている。外貨を稼ぐ産業として期待できることから、経団連も10月にコンテンツ産業の育成に向けた政策提言をまとめた。数百億円程度の国の関連予算を2000億円以上に増やすことや、支援を一元的に担う コンテンツ省の設置を検討すべきだと提起する。

コンテンツ省の設置については、前回投稿「経団連の提言するコンテンツ省(庁)の新設が必要なこれだけの理由①」で以下の三つの理由を挙げ、

  • 赤字が拡大する著作権等使用料の国際収支
  • 経済成長促進効果のあるパロディも未だに合法化されていない
  • 2度にわたる改正を経ても道半ばの日本版フェアユース

その②でさらに三つ合計で六つ理由を挙げてその必要性を述べた。

  • 著作権法30条の4
  • 権利者の利益代表委員が7割以上を占める文化審議会著作権分科会の委員構成
  • フェアユース導入国のGDP成長率と著作権法担当官庁

産経新聞記事は続ける。

実際、国が「誇るべき財産」と評価する日本のコンテンツは 海外で人気がある。知的財産(IP)としての稼ぎを示す「コンテンツ IPの世界累積収入ランキングでは、トップ25のうち10コンテンツを日本発が占める。首位は人気ゲームのポケットモンスター(ポケモン)だ。 インバウンド(訪日客)需要の喚起にも貢献している。

こうした日本のコンテンツの海外での人気は筆者も身をもって体験した。

以下、2019年6月のSNSへの投稿から。

甥が駐在しているジャカルタに出かけ、京都の姉妹都市でもある古都ジョグジャカルタまで足を伸ばした。世界遺産ボロブドールでは面白い体験をした。夏休みに入った小中高生が大勢来ていて、日本人なら一緒に写真を撮りたいと私の日本語ガイドに頼んできた。すべてOKして代わりに私のスマホでも撮影した。写真はその一例で同じシャツ姿が多いのは学校の制服のため。聞けばドラえもんが毎週日曜日に1時間放映されているそうで、ある女学生はドラえもんのマスコット付のスマホを持っていた。

母親から娘と一緒に撮ってくれと頼まれるケースもあったが、同じ世代のガイドによれば母親も「おしん」を見て育った世代。かってアメリカはハリウッド映画を輸出することで米国製品の輸出につなげるTrade follows film とよばれる政策を実施した。近くは韓国が韓流ドラマを輸出することで韓国製品の売り上げに貢献した。日本もクールジャパン戦略を掲げているが、これだけ浸透している日本のソフトパワーをもっと活用できないかと思った。

韓国コンテンツ産業の輸出額は2016年から2020年の5年間に倍増。これに大きく貢献したK-POPの輸出額は2010年から2019年の10年間に9倍に増えた(詳細は「国破れて著作権法あり~誰がWinnyと日本の未来を葬ったのか」第7章7-8 「21世紀のビートルズを生んだK-POPの成功例に学ぶ」参照)。

クールダウンしたクールジャパン戦略の轍を踏まないためにもコンテンツ省(庁)の設置に期待がかかる。