黒坂岳央です。
「海外ではドンドン昇給しているのに、日本は経営者がケチだったり、企業の利益率が低いので給料が上がらない!」という愚痴をよく見る。本当だろうか?
確かに米国のIT企業を中心にとんでもない高給が取り上げられているのを目にすることがある。だが、この話には多くの誤解も含まれていると感じるし、昇給する方法を間違って理解することで結果の出ない努力になっている人も多い。
本稿では日本で給料をドンドン増やしていく方法を取り上げたい。結論からいえば「ハイスキル、労働市場で価値ある業務経験を積んで数年ごとにより良い環境へ転職を繰り返す」である。

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どの国でも年収アップには転職を伴う
「日本は頑張って会社に尽くしても全く昇給せず、海外では同じ会社にいるだけで順調に昇給する」というイメージがあるが、まずこれは誤りである。
たとえば米国では、昇給のために転職するのが一般的で、数年ごとに転職してより高い給与や条件を求める人はまったくめずらしくない。転職直後に、すでに次の転職を見据えて自己管理でキャリアデザインを考えるのだ。
加えて仕事は成果主義で判断され、会社に残り続けても、スキルや実績がドンドン上向いていれば評価されれて昇給はあるだろうが、現状維持では降格もある。
ざっくり感として米国での転職時の昇給率は10~20%程度であるのに対して、社内昇給率は年3~5%が一般的だ。しかもこの昇給は「前年よりハイパフォーマンスな結果を出し続けている」という前提だ。時間効率を考えるとどう考えても昇給を待つより転職した方が早い。
筆者はサラリーマン時代、勤務先以外でも取引先で多くの米国系企業を見てきたが、「3年同じポジションが続く現状維持社員はモチベーションが低い」といっていた人もいた。実際、外資系企業にはup or out(昇進か?出ていくか?)という言葉がある。これは多くの日本人にはない感覚ではないだろうか。
また、多くの日本人がいう「アメリカの会社では~」というのはITや金融業界など利益率が極めて高い業界をいっており、一般職ではそこまで劇的なアップは少ないのが現実である。
日本と海外を比較する場合は「同じ業界、同じ業務、同じ役職」の水平比較をするべきだが、度々SNSで巻き起こる論争の多くは、日本の一般職と米国の大手ITテックとの非水平比較になっていることが少なくない。これではそもそも前提条件の時点で破綻している。
また、イギリスや中国などでも転職ほどの大幅な昇給は期待しづらいのが一般的だ。特に中国では日本以上に「転職しないと給料は上がらない」という認識が強く、ITや金融などのハイペースな業界では、30代半ばまでに転職を繰り返して給料を上げるのが一般的とされる。
「年収を上げたければ転職」が答えなのだ。
「日本は頑張っても報われない」は本当か?
筆者は始めから米国系企業でキャリアデザインを考えていたので、「転職を繰り返して年収アップ」というのは働く前から「当たり前」という思考だった。実際、働きながらスキルアップや業務経験を積むことで数年おきの転職でドンドン年収は上がり、最大で年収200万円アップとなった。
さらに、転職後も積極的にハイレベルな業務に挑戦し、それが評価されてスキルグレードが上がった結果、ボーナスも含め100万円以上の昇給につながった。
また会社の同僚や、親族や知人のITエンジニアなんかも、「労働時間の長さではなく、いかに時間単価を上げるか」「若い間にドンドン転職をしてより高待遇の会社にハイスキルをつけて入る」ということを目指して努力しているように見える。20代で年収1000万円以上に到達する人は概ね、これと似たような思考を持っていると考える。
その一方で、「頑張っているのに報われない」という人の中には「努力の方向性が間違っている」と感じる人も少なくないと感じるのだ。
たとえば同じ会社で同じ業務を続けるだけでは、昇給しなくても何ら不思議ではない。すでに述べたように毎年同じ仕事をする現状維持では、米国でも…いやむしろ成果主義に厳しい米国だからこそ、評価されることはない。
確かに仕事の経験を積めば手順は熟練して生産性は高まるが、それを言い出すなら入社直後、手が遅いことについて会社は人材への行投資として寛容に待ってくれていたのでは?とも言えてしまう。
また、「人手不足で残業時間が長くなって頑張っているのに評価されない」、という意見についても、論理的に昇給する理由にはなりづらい。本人はプライベート時間を犠牲にして努力しているのは間違いないが、会社はその分、割増賃金としてすでにリターンを出しているからだ。
◇
長時間労働でスキルアップの余地もないので昇給が望めない、という人は労働集約的でなく頭脳集約型の仕事についてスキルアップを通じた待遇アップを目指すことを勧めたい。ただ、この道は結果を出せなければ厳しい評価が下されてしまうのだが。
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