最近、出版コンテストの数が増えています。これらの、出版コンテストに片っ端からエントリーする人は、「出版ニキ」と言われているとかいないとか。本稿では、出版コンテストの実態について掘り下げていきます。

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出版コンテストとは何者か
最近、出版コンテストの数が増えています。出版社が主催するものであれば、出版が保証されます。著者や出版コンサルタントが主催するものは、編集者がゲストとして参加し、興味のある企画に対して札を上げる形式になります。
しかし、主催者と編集者が結託しているケースが少なくなくありません。参加者全員に札が上がったとしても、編集者は本気で検討する気持ちがないため、これらの結果が出版に結びつくことはありません。
次に目立つのが、出版コンテスト詐欺です。受賞者の企画がある程度進むと(企画通過、執筆活動等)、担当者から次のような連絡が入ります。
「現在、世界的に資材高騰の影響で、この企画を本にすることが難しくなりました。本にしたいのであれば、○○万円の費用がかかりますが、どうしますか?」といった内容です。
出版を希望する人の「夢を食べる仕組み」が広まっているのです。このような背景があることから、私は出版コンテストに対して少々懐疑的な姿勢を取っていました。
出版コンテストの講評
このような中、2月にきずな出版(新宿区)の出版コンテストがリリースされました。当初は詳細情報が公開されていなかったこともあり、少々辛口に講評をおこないました。以下の記事も参照ください。


3月4日(火)は出版コンテストの結果が発表される、「きずな祭り」が開催されました。私にはジャーナリストとして公平な立場で取材を行うことが求められるので出席をしてきました。
ポイントは応募者にとってのメリットが明示されるかという点、そして、審査結果の納得感です。
応募者にとってのメリット

当初は、最優秀賞1名の予定でしたが、2名が発表されました。最優秀賞の2名には出版確約のプラチナ切符が手渡されました。※受賞の写真を掲載します。
橋本南美『もう一度、夢を持つ勇気 ―仲間と挑戦を続けると、人生はこんなに面白くなる―』

※右が橋本さん
シムラアキコ『自己肯定感は「着物」で上がる!』

※中央がシムラさん
次に、優秀賞3名の発表(出版確約ではないが担当編集者が指導する)、その他に、ベストオーディエンス賞10名(オーディエンスの支持が多かった企画)、エール賞12名(今後に期待する)が発表されました。素晴らしい結果だったと思います。
文学賞とは異なり、出版社が作家(候補者)を応援することが目的です。十分にその役目を果たした、素晴らしい出版コンテストだったように思います。このような、コンテストのラストは、結果の良かった人、悪かった人の明暗がはっきりするものですが今回は違いました。
その証拠に参加者全員が抱き合って感動で涙しています。この空気感を伝えられないのが残念ですが、非常に温かい雰囲気に包まれた授賞式でした。
審査結果の納得感について
私に誤解があったのですが、審査結果に予選の投票数は一切加味されませんでした。つまり、企画として高い評価を受けたものが最優秀賞に至ったということになります。
さらに、優秀賞3名、ベストオーディエンス賞10名、エール賞12名が発表され、これらの企画にも担当者がアテンドされ出版実現に向けて邁進することになります。確約はされてはいないものの、チャンスの門戸を広がりますので、英断ではないかと思われます。
今後、出版コンテストは年2回開催することが発表されました。次回は9月開催です。
ここで、「受賞する人数が多ければいいのか」という論点があるかと思います。私は「是」であると考えます。受賞人数が増えれば、それだけチャンスが広がることを意味するからです。
なお、受賞者が増えるということは、出版社にとって持ち出しコストが増えることを意味します。出版社が腹を括らない限りできることではありません。
私からもエールを送ります
出版コンテストは、出版を希望する人々にとって一つの大きなチャンスであり、多くの人々の夢を叶える手助けをしていることは間違いありません。
しかし、そこには詐欺や実際の出版に結びつかないことも少なくないため、参加する際には注意が必要です。出版を実現するためには、努力と情熱だけでなく、冷静な判断も求められます。
今回のきずな出版のコンテストは、多くの応募者に公平なチャンスを提供し、参加者が一体となり喜びを分かち合う姿が印象的でした。次回のコンテストがどのような展開を迎えるのか、期待と共に見守りたいと思います。
受賞者の皆さん、おめでとうございます。そして、今後も夢を追い続ける全ての方々にエールを送ります。新しい絆が生まれる瞬間を楽しみにしつつ、未来の出版業界の発展を期待しています。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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