トランプ大統領、シェブロン社のベネズエラでの採掘許可更新させず

ベネズエラは僅か20年で豊かな国が廃墟となった

トランプ大統領がラテンアメリカで政権の打倒を狙っているのがベネズエラ、キューバ、コロンビアである。ベネズエラは世界で原油の埋蔵量はナンバーワンとされながらも、軍人ウーゴ・チャベスが1999年に貧富の差を無くすとして社会主義革命を実施して政権に就いた。しかし、彼と後継者ニコラス・マドゥロの二人の大統領は多くの企業を国営化させ、経営の素人である軍人らを経営に就かせた。利潤追求を二の次とする国営企業は国家を経済的に荒廃させた。また一般の企業も政府が干渉して利潤追求を否定させるような社会をつくらせた。その影響で事業主は経営を放棄するようになった。そのせいで、多くの企業が廃業し、物不足が顕著になっている。それもあって、現在まで生活困窮と物不足で800万人が国を去った。この二人の大統領は、僅か20年余りで国家を退廃させるという記録をつくった。

トランプ大統領、米国シェブロン社のベネズエラでの採掘権を更新せず

トランプ大統領はベネズエラで原油などの採掘をしている米国シェブロンに対し採掘許可の更新を取り下げた。これもマドゥロ氏が不正選挙で敗北したにも拘わらず、今も大統領のポストにしがみついているのを経済的に苦しめる一貫のひとつである。

元々、シェブロンはその前身であるガルフ石油が1920年代からベネズエラで採掘していた。この事業は一旦中断されていたが、1996年からシェブロンは採掘を再開した。

シェブロンはベネズエラ政府の経営参加を受け入れて事業の継続を図った。しかし、利益の50%を同政府が受け取ることになっている。一方のエクソン・モービルやコノコ・フィリップスはそれを嫌って撤退した。

トランプ政権がシェブロンの事業継続の許可を出さないということで、上述した50%の利益をマドゥロ政権は受け取ることができなくなる。現在ベネズエラの産油量は日量100万バレルで、その25%をシェブロンが産出していた。

チャベスが政権に就く1年前の1998年だと、日量312万バレルを産出していた。このように産出量の大幅な減少が影響して、世界で埋蔵量でトップを誇る国が皮肉にも車のガソリンでさえ不足するという事態が起きている。

しかも、ベネズエラは制裁の影響で原油の販売はその大半が闇市場での販売になっている。

ガデオン作戦

トランプ大統領は1期目の時にマドゥロ大統領の政権を打倒させるべく、ベネズエラへの軍事介入を模索していた。その前哨戦として2020年5月に米国の軍人2名と60名近い傭兵がマドゥロ大統領を拉致するプランを実施。ガデオン作戦と呼ばれていた。しかし、ベネズエラで諜報活動をしているキューバの軍人によってそれが暴かれ失敗に終わった。

ベネズエラの諜報機関はキューバがその役目を果たしており、かなりレベルの高い諜報活動をしているとされている。ベネズエラでの諜報活動やマドゥロ大統領の護衛はキューバの軍人が行っている。およそ5万人のキューバの軍人が国家の安全保障を担っているとされている。

今後もトランプ大統領は経済面からマドゥロ大統領を窮地に追い込む手段を選択して行くであろう。当初、軍事介入というプランも検討されたようであるが、ベネズエラは国土面積が広く、数万人の米国部隊を派遣するのは無謀だとされた。