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区分マンションには、区分所有者で構成される管理組合が必ず存在し、その管理組合がマンションの管理運営を行っている。実際の管理執行は管理組合員の中から選任された理事や役員が行うことになるのだが、今、この管理組合が「実質的に乗っ取られる」という事案が密かに増加している。
区分マンションを収益用(賃貸物件として貸し出すなど)として所有している人なら実感していると思うが、マンション管理組合の理事や役員は意外とやるべき業務が多く、できれば理事や役員は引き受けたくないというのが素直な心情だろう。
この「素直な心情」を巧みに利用し、管理組合を実質的に乗っ取るというケースが実際に起こっているのだ。
管理組合乗っ取りのスキームはこうだ。まず、比較的価格が低く、戸数が多めの区分マンション(主にワンルームマンション)を購入する。その後、管理組合の理事長などの役職に立候補し選任されれば、大規模修繕工事など大きなお金を動かせる管理組合意思決定の中枢となることができる。
もちろん、管理組合の理事長が好き勝手に管理組合の資産(積立金など)を使えるわけではなく、さらには大規模修繕工事などを行う場合は管理組合の総会を開き、他の管理組合員の賛同(議決)を得なければならない。
実は、これこそが乗っ取りスキームの核心なのである。重要なのは、収益用で区分マンションを所有している人の多くは、総会に出席することも少ないし、理事や役員などへの就任もできるだけ避けたいという心理が働く点だ。
その為、総会の通知を受けても本人は出席せず、委任状などによって総会議案への意思決定は「理事長(理事会)に一任する」というケースが非常に多い。このような形になり、総会で他の組合員の賛同を得られれば、理事長は議決に従い堂々と管理執行ができるようになるのである。
問題は、その理事長(理事会)が管理組合の資産を「食い物」にしようとしているかどうかだ。
過去には、ある区分マンションの管理組合理事長が工事業者と結託して大規模な修繕工事の代金を水増しし、その水増し分をリベートとして受け取り、管理組合に対する背任罪で有罪となったケースなどもある。
筆者がいくつかの区分ワンルームマンションの管理組合に取材を行ったところ、この乗っ取りスキームを利用しようとした人物が、別の管理組合員に企てを阻止され、大きな被害を未然に食い止めることができた事案や、あるマンションの管理組合員が今まさにこのスキームを利用したグループと闘っているなどの事案に触れることができた。
筆者が恐怖を感じたのは、同スキームを利用しているのは上記の2事案とも同じ人物・同じグループであるという点だ。
つまり、同スキームは同グループによって、密かに社会へ蔓延している可能性すらある。
上記の具体事案については今後、民事・刑事で係争となる可能性があるので本稿ではこれ以上触れないが、このスキームを利用しているケースが全国的に広がっているとすれば、被害規模を勘案すると大きな社会問題となるかもしれない。
区分マンション(とくにワンルーム)を所有している人は、できるだけ管理組合総会に出席することを心掛け、総会の議事録や決算報告書にもしっかり目を通して、自分のマンション管理組合に不正・不透明な点が無いかどうかチェックすることを強くお勧めしたい。