アメリカではトランプ政権は不法移民の強制送還を加速するために、『敵性外国人法』(Alien Enemies Act of 1798)を発動することを決定しました。
これはベネズエラなどを中心とする中南米やメキシコの麻薬カルテルやギャングのメンバー、犯罪者である外国人を国外に追放することが目的とされています。
外国テロ組織トレン・デ・アラグアによる米国侵略に関する外国人敵国法の発動 ホワイトハウス

この1798年に制定された法律は、フランスとの戦争前夜に可決された『外国人および扇動法』の一部で、アメリカの政府転覆を企む外国人を国外に排斥するためのものでした。

トランプ大統領Xより
外国人が「アメリカ政府に対する政治的反対意見」を持つことを「忠誠心がない」と見なし、アメリカ市民ではない「外国人」が米国を転覆させるために、出身国を支持することを恐れた議会が決定したのです。
この法律では、単に外国人が「忠誠心がない」とみなされる場合だけではなく、規制がかなり幅広い分野に及び、報道機関への規制、居住要件を引き上げ、出身国との戦争が発生した場合に外国人を「逮捕、拘束、確保、排除する」事が可能です。
この法律に従って、大統領が戦争中には敵国の外国人を補足し、強制送還することもできるのです。
アメリカという国の成り立ちを考えると、独立を勝ち取るためにこのような法律が制定された背景がわかります。
日本の人々の多くはアメリカというのは非常に自由でオープンな国だと考えていますが、実は外国に対しては想像以上に閉鎖的であり、アメリカに対して忠誠を誓わない外国人や同化しない人間に対しての同調圧力は非常に強いです。これは実際にアメリカに住むとよく分かります。
そしてアメリカ人というのは外国的なものや外国人に対して、脅迫概念に近いような嫌悪感があるのです。
1798年に制定されたこの法律が使われるのは、第二次世界大戦中に日系人が強制収容されて以来です。
ただし今回のポイントは麻薬カルテルやギャングなどを排斥するためにこの法律を使うと言っていることです。
『敵性外国人法』が使用されるということで実際に使われた例としてアメリカのメディアや分析家は、日系人の強制収容を引き合いに出していますが、注目しなければならないのは、逮捕収容された日系人は犯罪者でもなく、正当な裁判を受けることもなく逮捕され強制収容されてしまったということです。
その数はなんと12万人以上に及んだのです。
しかもアメリカ政府は1920年代から日系人を人質として収容することなどを検討しており、事前には調査も行われ、ホワイトハウスが調査を委託したマンソン報告書では、日系人はアメリカに対して忠誠心があり、反旗を翻すことはない、スパイ活動は行わない、ということが調査で判明していたことです。
ところがアメリカ政府は、日系人の家に突然訪れて何の罪もない人たちを逮捕したり、結婚式や誕生会まで襲撃して日系人を無理やり強制終了したのです。
妊婦や高齢者、赤ん坊まで僻地にある不潔な馬小屋を改造した宿舎に入れられて、金網が張り巡らせた中で銃を持った看守に監視されながら暮らしました。

収容された日本人たちはアメリカ政府によって勝手にスパイ活動を行う可能性があるとか、政府転覆を目論む可能性があるとされて、正当な調査も裁判も何もなく家や財産を奪われて家族と離れ離れになり強制収容所に入れられたのです。日系人とは言ってもアメリカ生まれで完全にアメリカ人だった日系人もいましたし、日本からやってきたばかりの移民一世や二世もいたのです。アメリカ政府が日系人に対して謝罪をしたのは何と1990年になってからです。
そしてドイツやイタリアの人々は強制収容されることはありませんでした。
『敵性外国人法』をトランプ政権は南米のギャングや麻薬カルテルに対して適用するということを言っていますが、今後はかつての日系人のように特定の人種や宗教を持った人達や、政府に異論を唱える人々が逮捕拘束されて追放されるという可能性もあります。
またトランプ政権は、アメリカ史上最も勲章を受けた部隊である日系人で構成された第442連隊戦闘軍(442nd Regimental Combat Team)の記載を政府のサイトから削除してしまいました。つまり日系人の貢献をアメリカの歴史から消し去りたい、という意図なのです。
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