バチカン市のシスティ―ナ礼拝堂で開かれた新教皇選出するコンクラーベで8日午後、4回目の投票で米国シカゴ生まれのロバート・フランシス・プレボスト枢機卿(69)が第267代のローマ教皇に選出された。米国人のローマ教皇選出は初めて。教皇名はレオ14世だ。

米国人初のローマ教皇レオ14世、2025年05月8日、バチカンニュースから
ペテロの後継者を決めるコンクラーベには80歳未満の133人の枢機卿が7日午後から新教皇を選出するために投票を行ってきた。約14億人の信者を抱える世界最大のキリスト教派のローマ・カトリック教会の最高指導者のローマ教皇に選出されるためには参加した枢機卿の3分の2の支持が必要だ。71か国から選出された133人の枢機卿が短期間で新しい教皇を選ぶのは難しいと予想されていたが、8日午後の4回目の投票で司教省長官でもあるプレボスト枢機卿が3分の2以上の枢機卿の支持を得て選ばれたわけで、システィ―ナ礼拝堂の煙突から白色の煙が出た時は教会関係者やメディアも驚いた。ちなみに、べネディクト16世は4回目、前教皇フランシスは5回目の投票で選ばれている。
レオ14世が同日午後7時過ぎ(現地時間)、サン・ピエトロ大聖堂の中央バルコニーから顔を出すと、新教皇を見ようと広場で待機していた数千人の信者たちから大喝采が起きた。新教皇は信者たちの前で笑顔を見せながら流ちょうなイタリア語にスパイン語も交えて短いメッセージを述べた。
新教皇は「(4月21日に死去した)フランシスコ教皇には感謝を捧げたい」と述べ、フランシスコ教皇が推進してきた教会刷新を評価し、「対話と開かれた慈愛に満ちた教会を目指したい」と述べ、前教皇が推進してきた教会のシノドス路線を評価した。
ちなみに、南米初の教皇となったホルへ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(76)がアッシジの聖フランシスコの名前を教皇名に選び、フランシスコ教皇と命名することで、どのような教皇を目指すかを内外に示唆したように、新教皇は教会から出て積極的な社会活動を推進していったレオ13世の後継者としてレオ14世と名乗ったことで、明確な教皇像を描いていることを示した。
レオ14世はフランシスコ教皇からバチカンに呼ばれる前は23年余り南米ペルーの宣教師として歩んできた聖職者で、貧困に悩む南米の教会の実情に精通しているといわれる。
新教皇を知るオーストリアのシェーンブルン枢機卿は「新教皇がフランシスコ教皇の道を継続することは間違いない。新教皇はフランシスコ教皇に似ているが、その言動は実務的で、相手の考えに先ず耳を傾ける。カリスマ性がある」と説明した。
世界最大のキリスト教派ローマ・カトリック教会は聖職者の未成年者への性的虐待問題が発覚して、教会の信頼を落とすとともに、特に、欧米社会では教会離れが進んでいる。また、聖職者の独身制の見直し、女性聖職者問題からLGBT(性的少数者)への対応など、世界の教会は多く難問を抱えている。
フランシスコ教皇の在位期間における重要な革新は、シノドス主義、すなわち共同体主義の強化だ。牧会神学者ポール・マイケル・ズーレナー氏はオーストリア国営放送とのインタビューの中で、「フランシスコにとって、教会のこの『シノドス化』は、第2バチカン公会議の教会のイメージの実現に他ならない」と語っている。
「世界シノドス」はフランシスコ教皇が2021年から2024年にかけて教会の刷新について話し合ってきた会合で、一般信徒や女性代表らも参加した。新教皇レオ14世は教皇選出直後の最初の演説で「教会シノドスの推進」を強調することで、自分が前教皇の教会路線の継承者であることを明らかにしたわけだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年5月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。