外国人労働政策に求められる制度的展開

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(前回:参院選の外国人政策:仮放免制度と強制送還

要点整理としての現状理解と受け入れ計画

本連載の初回に提示した三つの論点のうち、最後に位置づけた「求められる制度的展開」について、今回はその前提整理として、現行制度と受け入れ計画の要点を確認したい。

なぜ日本は外国人労働者の受け入れを進めるのか

政府は外国人労働者の受け入れを進める理由として、以下二点を主たる政策的根拠として挙げている。

  • 労働力不足への対応:日本社会は生産年齢人口の急減に直面しており、今後20年で約20%(約1,540万人)の減少が見込まれている。特に地方の中小企業・農林業・建設業・介護分野では人材確保が難しく、外国人労働者はすでに制度的インフラを支える要員として位置づけられている。
  • 社会保障制度の持続可能性:高齢化の加速により、保険料・税収の支え手として外国人就労者の果たす役割が強調されている。

これらの視点には「日本人労働者で代替すべきではないか」という批判もあるが、現場が機能するには中長期的な人材供給の見通しが不可欠であり、制度設計上の検討対象となる。

なお、政府による外国人受け入れには、他にも経済の国際化、競争力の強化、外交・経済連携の促進、地域社会の維持・共生といった多角的な論点が含まれるが、それらは制度論に踏み込む次稿以降にて検討する。

外国人労働者の実数と職種分布

出入国在留管理庁の公表によれば、2024年末時点での外国人労働者数は約204万人。その内訳は以下の図に示すとおりである。

図1:在留資格別分類と主要職種分布
出入国在留管理庁の統計をもとに、2024年末時点の外国人労働者の在留資格別分布と主要な職種傾向を整理。
特定技能の導入以降、分野別配置がより明確化されつつある。

特定技能分野は制度創設以来急増しており、今後の制度拡充に伴い、さらなる受け入れが見込まれている。

今後の受け入れ計画と分野別予測

2023年に改定された「外国人材受入れ及び共生のための総合的対応策」に基づき、政府は今後5年間で「特定技能」枠で最大82万人の受け入れを計画している。分野別では以下のような予測が示されている。

図2:特定技能分野別受け入れ目安
2023年改定の「総合的対応策」に基づく特定技能分野別受け入れ目安。
各分野で必要とされる人材の制度的枠組みと、地方自治体への影響が焦点となる。

一部自治体では、これらの分野に対応した研修施設や多言語支援の整備が進みつつあるものの、たとえば佐倉市を例に取るなら、生活習慣のサポート、日本語教育などの「一般的な受け入れ態勢の構築」は、地方自治体の負担に委ねられており、中央省庁の支援体制はまだ十分とは言えない。

制度設計への要請

ここまで示した予測は政府の公表資料に基づくものだが、さらに細かい分野別の数値や見通しは、JICA・民間シンクタンク・研究者らによる独自推計によって補完されている。しかしそれらは、あくまで独自の前提と手法に基づくものであり、政府の制度運用に直接的な責任を伴うデータではない。

したがって、今後求められるのは、各省庁が中長期の「分野別受け入れ必要数」を明確に算出・公表することである。その数値が妥当であるかどうかを、国会や政党が正面から議論し、国民に共有することが、制度設計の透明性と正当性の確保に資する。

以上を踏まえ、次稿では政党間の政策論に求めることについて整理したい。

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