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日本赤十字社医療センターの面会要綱から、特定フロアに関する記載が削除された。
2026年2月4日時点の魚拓には、当該フロアにおいては面会時間の制限が事実上緩和されている旨の記述が確認できる
現在の面会要綱ページでは、この記載は見当たらない。一方で、一般病棟や通常の個室に対する面会制限自体は継続している。つまり、面会制限という制度の骨格は変わっていない。
ここで問われるべきは、この変更が制度の見直しによるものなのか、それとも表現の整理にとどまるのかという点である。もし面会運用が実際に変更されたのであれば、その基準や適用範囲は明示されるべきだろう。逆に制度が変わっていないのであれば、なぜ当該記載だけが削除されたのかについて説明が求められる。
日本赤十字社は、単なる医療法人ではない。国際赤十字の七原則の中でも「公平」は中核的理念であり、人種や身分、財産による差別を排することが明記されている。日本においては皇室との関わりも深く、歴代皇后が名誉総裁を務めてきた経緯を持つ。こうした背景を踏まえれば、面会制限の運用や例外規定のあり方は、単なる院内ルールにとどまらず、組織の理念と整合的であることが求められる。
さらに重要なのは、これが個別部署や現場判断の問題として片付けられるべきではないという点である。日本赤十字社は全国規模の医療ネットワークを持ち、統一的な理念とガバナンスの下で運営される組織だ。面会制限のように患者や家族の基本的な関係性に関わる運用が存在する以上、その基準や例外は組織として明確に定められ、説明可能でなければならない。仮に個別病院の運用差があるとしても、それを統括する立場にある本部および中核病院の責任が問われるのは当然であり、「現場の判断」で済む性質のものではない。
日本赤十字社は国内外の公的・準公的活動にも関与し、社会的信頼の上に成り立つ組織である。国際交流行事など公的性格を持つ場面においても、その理念と実際の運用の整合性は自然と注視される。だからこそ、患者や家族に直接関わる面会制限の基準や例外規定については、より一層の透明性が求められる。
面会制限の問題は、一病院の内部運用の問題ではない。日赤は全国に広がる医療ネットワークを持ち、その運用は事実上のモデルケースとして他院にも影響を与える。だからこそ、面会制限の基準や例外運用の整合性については、透明性のある説明が必要となる。
重要なのは、面会制限の是非を感情論で語ることではない。感染対策や医療安全との両立が求められる場面があるのも事実である。しかし、その制限がどのような基準で適用され、どのような条件で緩和されるのかが明確でなければ、制度の正当性は保たれない。
記載の削除それ自体は、議論が進んでいる兆候とも受け取れる。だが同時に、制度としての整合性や説明責任が十分に示されているとは言い難い。面会制限が医療安全のために必要だというのであれば、その必要性と適用基準は公開されるべきだろう。
全国に影響力を持つ医療機関である以上、運用の透明性は個別病院の内部事情を超えた公共的な問題となる。面会制限の議論を前に進めるためにも、制度の実態と基準についての説明が求められている。
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