子育てがしんどいのは、あなたが「ダメ」だからじゃない

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子どもが言うことを聞かないとき、親はだいたい自分を責める。「私の育て方が悪いんだ」「もっとちゃんとしなきゃ」。真面目な人ほどそうなる。

ただ見守る科学的子育て:3兄弟が一橋、慶應、東京藝大に合格! わが子に主体性が勝手に身に付く最も簡単な方法』(たかもりくみこ 著)Gakken

でも、ちょっと待ってほしい。

子どもが思い通りにならないとき、本当に起きていることは何か。多くの場合、それは「自分の地雷」を踏まれているだけだ。

地雷。物騒な言葉だけど、ぴったりくる。罪悪感、「こうあるべき」という思い込み、劣等感、無力感、過去の心の傷――私たちが大人になるまでに溜め込んできたもの。普段はうまく蓋をしている。でも子どもは、その蓋をいとも簡単に開けてしまう。天才的に。悪気なく。むしろ無邪気に。

「思う通りにならない!」とカッとなるとき、怒りの矛先は子どもに向いている。でも本当は、自分の中の古い傷が疼いているだけだったりする。

――話を戻すと、冒頭のKさんの話だ。

Kさんの地雷は「子どもがちゃんとしていないと、自分がダメな親だと思われる」というこだわりだった。それに気づくまでに時間はかかったが、気づいてからの変化は早かった。こだわりを手放し、自分の気持ちを整え、子どもと「つながる」ことだけに集中した。

結果、家の空気が変わった。以前は避けていた夫とも仲良くなった。SNSの投稿が明るくなった。Kさん自身もやりたいことを始めた。家族で笑う時間が増えた。子どもの成績がどうとか、そういう次元の話じゃない。家族が、家族に戻ったのだ。

ところで、SNSを見ていると気が滅入ることがある。完璧に見えるママたちの投稿。手作り弁当、整頓された部屋、笑顔の家族写真。あれを見て「私は全然ダメだ」と思う人がどれだけいるか。いや、私の周りにも山ほどいる。

はっきり言う。あんなもの、幻想だ。

人は自分を責めているとき、「心の空間」を失う。余裕がなくなって、子どもの良いところが見えなくなる。そしてますます自分を責める。完全な悪循環だ。

「あなたのために頑張っているのよ」

この言葉、子どもにとってはほぼ呪いに近い。言われた側は、感謝しなきゃいけない気がするし、でも頼んでもいないし、息が詰まる。子どもが本当に望んでいるのは、頑張っている親じゃない。”普通”でいてくれる親だ。機嫌よく、ただそこにいてくれる親だ。

責任感を降ろすことは、育児放棄とは違う。「ちゃんとしなきゃ」という重たいリュックを降ろすだけだ。降ろしたら、たぶん驚くほど体が軽くなる。

子育てがしんどいと感じたとき。それは、あなたがダメだからじゃない。地雷が教えてくれているのだ。「そろそろ、このこだわり手放していいんじゃない?」と。

地雷は、呪いじゃない。招待状だ。幸せへの。

※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

<書籍評価レポート>

■ 採点結果
【基礎点】  42点/50点(テーマ11点、論理構造10点、完成度11点、訴求力10点)
【技術点】  22点/25点(文章技術11点、構成技術11点)
【内容点】  21点/25点(独創性11点、説得性10点)
■ 最終スコア 【85点/100点】
■ 評価ランク ★★★★ 推奨できる良書

【高評価ポイント】
実例の説得力:「問題児」と呼ばれた中学生が一流企業で活躍するまでの具体的なエピソードを軸に据えており、読者の感情に強く訴えかける構成となっている。数年後、さらにその後と時間軸を追うことで変化の過程にリアリティが生まれている。

「地雷」という独自の概念装置:親が子どもに対して抱く苛立ちの正体を「自分の地雷」と名づけ、罪悪感・責任感・劣等感などを体系的に整理している点は独創的である。抽象的になりがちな心理メカニズムを、日常語で腑に落ちる形に変換する手腕が光る。また、「母親なんだから」という社会的プレッシャーへの言及など、当事者が「わかってもらえた」と感じられる記述が随所にある。説教調に陥らず、読者と同じ目線を保っている点が本書の大きな魅力である。

【課題・改善点】
理論的裏付けの不足:「肯定的注目」など心理学用語が登場するものの、学術的な根拠や研究データへの言及がほとんどない。実例の力に頼りすぎており、再現性への疑問が残る。エビデンスの補強があれば説得力がさらに増すだろう。

具体的な実践手順の不足:一定程度の方向性は示されているが、では具体的に何をすればよいのかというステップが十分に提示されていない。自己問いかけの例はあるものの、日常に落とし込むための方法論がもう一段欲しいところである。

■ 総評
本書は「問題児」のレッテルを貼られた子どもとその母親の実話を軸に、親の内面にある「地雷」こそが子育ての苦しさの正体であるという独自の視点を提示した一冊である。エピソードの選び方と語り口に力があり、読者を引き込む訴求力は高い。

特に孤立しがちな母親層への共感的なまなざしは、類書にはない温かさを持っている。理論的裏付けや実践手順の具体化にはさらなる深化の余地があるものの、感動と知的な発見と自己変革への意欲を同時に喚起する構成力は確かであり、子育てに悩むすべての親に推奨できる良書として高く評価できる。

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