イラン戦争の長期化、原油高による物価高騰が不可避の中で、日銀は政策金利(0.75%)を据え置きました。一方、価格上昇には需要抑制の機能があるのに、高市政権は補助金(月5000億円)のばらまきでガソリンを1㍑=170円に抑えつける。イラン戦争下の原油不足なのにゴールデンウイークの高速道路は安いガソリンでマイカーで大渋滞です。危機感がありません。
経済原則と真逆の対策を繰りだしている高市政権、その圧力下にある日銀の姿勢を突き、円は1㌦160円を突破しました。円安はインフレ要因です。財務省の大規模介入で155円台まので円高に押し戻したものの、その効果は一時的のようです。
この問題の本質は、高市首相がこだわる「積極財政」はインフレを必要としているという点にあります。インフレが長期化すれば、「価格上昇→消費税収増→企業の売り上げ高の増加→税収増加→予算膨張→積極財政」という循環が生まれるからです。

4月30日、中東情勢に関する関係閣僚会議に出席した高市首相 首相官邸HPより
インフレ税を積極財政の財源に
国民的に不人気な増税は政治的にできない状況ですから、「見えざる増税」、つまり「インフレ税」で税の増収を図り、積極財政というスローガンを実現しようとしているのです。そのためには、3、4%のインフレを長期化させることが必要です。ですから政権は日銀にも圧力をかけ、利上げを渋らせているのです。そう考えるしかありません。
高市政権の思惑を市場は見透かしてます。「高市政権のシナリオが絵の描いたようには進まない。インフレの下での成長率の低下、つまりスタグフレーション(不況下の物価高)に陥り、日本経済の状態は悪化する」とみて、円安を仕掛けているのだと思います。
片山財務相は「断固たる措置をとる」と断言しました。「断固たる」とは、恐らく高市首相の指示による言葉遣いでしょう。三村財務官は「これは最後の退避勧告と申し上げる」とまで言い切りました。
ヒステリックな表現はかえって逆効果
大規模介入の効果が長続きしなかったら、どうするのでしょう。国際金融、通貨問題においてこんな慎重さを欠いた不用意な言葉を使ったのは、政権側に焦りがあるからです。「断固たる」、「最後の退避勧告」は異常な表現です。市場は口先では動かせない。ヒステリックな表現は逆効果です。
高市政権の脆弱なシナリオも「急激な円安→物価高」で破綻すると困るので、160円を攻防戦に想定しているのでしょう。
金利据え置きに関する各紙の社説を読んでみると、「慎重な姿勢を取ったのは理解できる」(読売)、「利上げ見送りの判断は間違いとは言えない」(朝日)などです。目先のことしか論じていないのです。なぜ高市政権が隠すシナリオ(インフレ税→積極財政の財源→国民負担増)を読み込んで、日銀の金融政策を論じないか不満を感じます。
「行き過ぎた円安は輸入物価の上昇に拍車をかけかねない。日本の弱点に付け込むような投機は許されない」(読売)の指摘はどうかと思います。為替市場は「投機+実需+中長期的な視野」で構成されているという見方が基本でしょう。
「弱点につけこむような投機が許されない」のではなく、「弱点を投機が見出してくれる機能が市場にはある。『弱点=日本の場合は財政悪化、利上げをしにくくしている異次元金融緩和の後遺症』の正常化を急ぎ、投機家につかれないようにすることだ」が正解なのです。
あの黒田・前日銀総裁の高市批判に驚く
かなり驚いたのは、異次元金融緩和(アベノミクス)を主導した黒田・前日銀総裁は歴史的な失敗に対する批判に対して沈黙を守ってきたのに、最近自己反省をしないまま、高市財政、日銀の政策の論評を始めたことです。
「財政出動を拡大させるとか、金融緩和をする必要はない。そのようなことをしたらインフレになってしまう。2%の物価目標は達成されている」(読売新聞)とインタビューで語りました。「現在0.75%の政策金利は1.5%まで引き上げが可能」とも言い切りました。
異次元金融緩和の後遺症で、金融財政政策が袋小路にはまっていることをさしおき、現政権を批判する資格があるかという指摘があります。そうした批判があっても、「もうこれ以上、金融財政政策の誤ちをしないでほしい。大きな過ちをまた繰り返さないほしい」という思いからだと解釈しましょう。
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年5月2日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。







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